01



木々の揺れる音で、名前は目を覚ました。


「ココは・・・・・どこ?」


見渡す限りが木、木、木。
え、木?


「えっ?マジで?いやいやいやいや・・・ココどこ?って、もの凄く頭が痛い」


どうしようと迷いながらも頭をさすると、コブになっているところを発見した。


「(こんな場所に来た覚えなんて一切ない。これは、もしや、き、記憶喪失かもしれない!私は名前。よし、名前は覚えている)とにかく、ここがどこかを確かめなきゃな」


ポケットに手を突っ込むと、携帯があったので徐に取り出して、折りたたまれていた携帯を期待して開くと、圏外だった。


「そりゃ、圏外だよな。森の中だし、電波がよくなっていると言われているが圏外はまだあるっつうの・・・はぁ」


もう片方のポケットからは、バランス栄養食が入っていた。


「まぁ、助かるけど」


いつだったか、アニメで豆知識を披露してくれたのを思い出しながら、太陽の位置と腕時計の針で方角を調べながら、とりあえずは東へと足を進めていく。
途中に果物の木を見つけては、体力を回復する為に食べていた。


歩きつづけて4日目。
名前自身にも限界が近いのを感じていた。
明らかに疲労が見える名前は、大きな木に背をつけて座り込むと、一気に疲労感は襲い掛かり、立ち上がってこれ以上進む事は難しかった。


「いくら歩いても、街らしい手がかりもない。看板とかくらいあってもいいだろうが・・・・・」


そう呟いていると、草木が揺れる音がした。
名前は、静かに横に落ちている棒を取ると顔の前で構えていた。

ガサッガサッ

「・・・・・」

ガサッ

「・・・・・(汗)」


草木から出てきたのはトラ・・・いや違う。
サーベルタイガーだった。

さすがに名前も、サーベルタイガーが出てくると思わずに冷や汗が出てくる。

そんな名前を尻目に、サーベルタイガーはなんだか嬉しそうに名前へと近寄ってくるかのように見える。
名前は、殺気がないことから枝を下ろすと、サーベルタイガーは顔を擦りつけて甘えてきた。

こんな体験が生きているときに出来るだろうか?いや、出来ない。

サファリパークにでも行かない限り、大地でサーベルタイガーとこんなに至近距離で見ることはできない。
サファリパークでも、ここまで友好的なサーベルタイガーがいるはずがない!ってか、サーベルタイガー自体いない。


「いや、ほんとココどこ!?」


名前は、その場の勢いでサーベルタイガーの毛を撫でると、サーベルタイガーはさらに嬉しそうに喉を鳴らした。

鳴らした喉の音程は素晴らしいほど低く、とても猫のように可愛いものではなかったが、この際ご愛嬌だ。


「さて、懐かれても困るな」


ずっと1人で居たから少し寂しかった名前は、サーベルタイガーに話し掛けていた。
独り言でも、相手が欲しかったのが事実で、ちょっと寂しかったのも事実だ。


「人がいる場所を知っているか?知っていたら教えてくれないかなー?なんてな」


名前が言うと、サーベルタイガーは名前の前で伏せる体勢を取った。
サーベルタイガーのいきなりの行動に名前はどうすればいいのか分からずに立ち尽くしていると、サーベルタイガーの顔で名前を軽く胴体の方へと押し付けてきた。


「背中に乗るのか?」


そう尋ねてみると、サーベルタイガーは尻尾を振り、名前は了承と勝手に決めつけ、ゆっくりと背中に乗るとサーベルタイガーは立ち上がり、まさに獣道を走り出した。

サーベルタイガーが走り出してから数時間。
太陽は真上に昇っていたのに、今は夕日となっていた。


「まぁ、楽だけど・・・どこに向かっているんだろ」


さらに数分後。
サーベルタイガーは立ち止まると、名前を下ろすかのように体勢を低くした。

名前はサーベルタイガーから降りると、周りを見渡した。
遠くだが、確かに街のような明かりを名前の視界が捕らえた。


「マジで連れてきてくれたのか。・・・・・サンキューな」


そう言いながら、横にいるサーベルタイガーを撫でると、やはりサーベルタイガーは嬉しそうに喉をならしていた。
サーベルタイガーに別れを告げて、名前は街へと足を運んだ。

街に入ると名前は、呆然としかできないでいた。


「本気で、ここは・・・・・どこだ」


名前は、そう小さく呟く事しか出来なかった。



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