06



そんなナマエの後ろ姿を少し寂しそうに見つめながら歩いていた。


「はい、みんな静かに。今日2人の転入生が入ってきました。入ってきてください」

ガラッ

「ねぇ。あの男の子かっこよくない?」
「ほんと」
「照れている姿とかかわいー」

ザワザワ

「はい。静かに」


ざわつく教室を抑えようとしているが、一向に静まる様子が見えない雰囲気にナマエは苛立ちを募らせていく。

悟飯はクラスの圧倒する雰囲気に苦笑するしかなかった。


「静かにしてくれないと、自己紹介も出来ないから。はい、静まって」


何度注意しても、一向に静まらない教室にナマエは痺れを切らして背にしている黒板の下の壁をガンと蹴りつけた。
突然教室に響いた、何かがぶつかる音に教室の騒ぎは収まった。


「煩いって言われたんだろ?」


静かになった教室にナマエの声はよく聞こえた。


「黙ることすら出来ないわけ?」


教室が静まり返った中で、声を出したのは誰でもなくビーデルだった。


「ちょっと、騒いでいた私たちも悪いかもしれないけど、貴女の態度もどうかと思うわ」
「そ、そーだ。ビーデルの言う通りだ」
「それで?」
「これからクラスメートになるし、やり方くらい考えなさいよ」
「偉そうに指図しないで下さーい」
「なによ。本当の事じゃない!」
「お前みたいな正義感の塊ってタイプは、嫌い」


そうナマエがビーデルに嫌いと言った後に、横にいた悟飯がナマエの頬を軽く、本当に軽く叩いた。
まぁ、サイヤ人の力で叩かれたら、教室から飛んでいく事間違いないから。


「今のは貴女が悪いです」
「忠告しただけで、あいつらに危害はなかったと思うけど?」
「そっちではありません。正義感の塊のタイプは嫌いという言葉です。偏見ですよ」
「嫌いなものは嫌い。どうあがいても、仕方がないだろ。人間は偏見なしでは生きられないものとも覚えとけよ」
「そんなことはありません!!それと、静かにしてもらう事も、もっと違うやり方があったはずです」
「別の方法ね、それは気付きませんで?このやり方しか知らなかったもので」
「だから、誤ってください」
「なんで?」
「悪い事をしたら謝らなければ。仲良く出来ませんよ?」
「さっきも言っただろ?仲良くなんてするつもりは一切ないと」
「それでも、謝らなければいけません」


引く事を知らない悟飯を面倒臭く感じたのか、すみませんでしたと感情などこもっていない声で呟いた。


「えっと、気にしてないから」
「そうですか。良かったです」
「う、うん」
「(こいつら、人差し置いていい雰囲気だして。ってか、恋に落ちるのってもっとあとじゃなかったか?)せんせー。頭と頬が痛いので帰ります」
「あっ。あの、先程は叩いてしまってすみません。その、頬・・・大丈夫、ですか?」
「バッカじゃねーの?マジにうけとってんなよ。あのくらい本気で痛くなんかない。気にするほどでもない」


そういうと、ナマエは教室から出て行った。


「えっと、こちらに残ってくれたのが孫悟飯君で、先程の彼女がナマエさんです。孫君だけでも自己紹介してもらえるかな?」
「あっ。はい。えっと孫悟飯です。これから―――――」


ナマエは悟飯が自己紹介している時は既に、学校の外にいた。


「あぁ、ダメだわ。学校という場所にいるだけでイライラする。学校の外だとまだマシなのになー。はぁ、ドラゴンボールとの繋がりを思いっきり捨てたな」


そう呟いていると、公園から子供の声が聞こえてきた。


「ぶつかって来たのはあんた達だろ」
「やだなー。俺さ生意気なガキって嫌いなんだよねー」
「俺たちは何にもしていないだろーが」
「ねぇ、もうこの人たちほっといて行こーよー」
「あっれー?そっちのボクはどこに行こうとしてるのかにゃー?」
「なんだよその聞き方。バカにしてるのかよ」
「もう。煽ったらダメだってば」
「コッチのボクは可愛げもないねー」
「いいから、ほら。お兄ちゃんたちにお金ちょーだい」
「おまえ達にやる分なんかねーよ」
「いいから、よこせって言ってるんだよ」
「おい、いい加減にしないと、痛いめ見るぞ」
「ボクちゃん。痛いめってなにかなー?」
「ぐっ」
「痛いめってこういうことじゃねーの?」
「誰だ!?」
「今から倒れる奴に、教える必要なんてねーだろ」
「へぇ。言うね。女だからって、手加減しないけどな」
「そんなことよりも、自分の身の安全を考えとけよ」


そう言うなり、ナマエは駆け出すと相手の急所を狙いながら襲い掛かって行った。
それは、先ほどの苛立ちのうっぷんをここですべて晴らすかのように。


「バカは潰れてな」
「「・・・・・」」
「あぁー。スッキリした」
「お、お姉ちゃんカッコいいー!!」
「んぁ?」


ストレス解消に、ちょうどいい群れを潰したナマエは、スッキリしたいい顔になっていた。
そんなナマエにキラキラとした声で言葉を投げかけられて、ナマエは振り向いて、初めて絡まれていた子供達の顔を見た。

そして、やってしまったと自己嫌悪に陥った。



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