04



持っている地図とは建物が変わっているが、それっぽい道を道標に、持っている地図では繁華街っぱく描いてある中心部的な場所へと向かうべくブラブラ歩いていた。


「さて、どんな仕事がたくさん儲けれていいかな・・・」


ナマエはじいさんからもらった金で、運良く見つけた本屋で求人情報を読み漁っていた。
だが、どれもピンと来るものがなく、この先どうするか困っているときに、盛り上がっている人だかりがナマエの目と耳に入ってきた。

ナマエは好奇心を胸に、その人だかりに近寄ると、なんかのイベントをしているようだった。


「それでは、次の参加者はエントリー27、ビスコさんです」

うわあぁぁぁぁぁぁ!!


司会者であろう人の声がマイクから告げられると、周りの人々から大きな歓声が沸き起こる。
ナマエは、その熱気に少し引いて、横にずれるとスタッフらしき人へと、今の状況を聞きに行った。


「すいませーん」
「はい、どうしました?」
「これ、何のイベントですか?」
「これはね、――――――っていうんだ」
「へー」


このイベントは、自分で作った歌を披露して競い合うものだと簡単に説明を受けた。

上手くいけば、歌手としてデビューでき、参加者は自由。
飛び入りもなんでもありらしい。


「で、このイベント自体も賞金とかも出たり?」
「よくわかったね。賞金は150万ゼニーだ」
「(単位が良く分からないが)凄いっすね」
「あぁ。そうだろう!どうだい君も、自作があるならば出てみないかい?」
「うーん(あたしの世界の歌を歌っちまえば、楽勝じゃね?あれ?これでとんとん拍子にものごとが運べば、印税もgetできちゃう。・・・・・これって、異世界から来たあたしだけの特権ってやつじゃねーの?)」


自分の思考に、もしかしたら儲けることが出来るチャンスが到来。
上手くいけばと、素敵な金儲けを想像していたナマエは、口元を緩ませて遠くのほうを見つめていた。

そんな怪しい雰囲気を醸し出したナマエにスタッフは、おそるおそるもう一度聞いてみた。


「で、どうします?」
「もっちろん、でまーす」
「それじゃ、こちらに来て下さい。えっと名前は?」
「あぁー、本名じゃなきゃダメっすか?」
「そんなことないよ。バンド名でやっている人もいるしね」


ナマエは、実名って言ってもこちらでもらった名前だが、隠すことが出来るなら隠したい。



ナマエの中では、すでに名前を決めていた。


「パラレルワールドで」
「それじゃ、あと2人目だからここで待機しといてね」
「ありがとう。あっ、なんかギターとかない?」
「そこの楽器は好きに使ってくれていいやつばかりさ」
「そっか、サンキュー」


登録していくために、スタッフはナマエの元を離れていった。


「名前は隠したほうが楽しそうだしな。秘密は大好き」


参加者たちは、やはり自分で作った曲ではないといけないからか、観客に『いい!』と思える歌は少ないらしい。
だからこそ、ナマエは自分の世界のオリコンチャートに入っている曲を歌えるだけで、有利な立場にいた。


「(あたし最高だな。カラオケも行っていたし、声は低いのしか無理だから男性アーティストだけど高得点が高くて助かった。友達がバンドしているから、流れでギターも練習したこともあったし、これならうまくいくはずだ!)」


そう心の中で笑いを堪えていると、司会者の声がまた響き渡った。
意識を司会者の声に向けていると、ナマエの出番を告げるものだった。


「それでは、最後の参加者です。なんと、先程飛び入りで参加してくれた勇敢な女性だぁーー!!」

おぉぉぉぉぉ!!


司会者のテンションも、観客のテンションも申し分がないほど高まっている。


「(テンション高すぎるし、仕方がないな。テンション高い曲が始めで、次にバラードで賞金Getだ)」
「では、お願いします。パラレルワールドさんです」


ナマエが舞台に登場したと同時にまた歓声が沸き起こる。


「出来れば手拍子をしてほしい」


ナマエが、一定の早めのリズムで手拍子を刻むと、ノリのいい観客も同じテンポで手拍子を刻んでいった。
その手拍子に合わせるようにギターを弾き始めた。


〜〜〜♪♪〜〜♪〜〜♪〜〜〜♪


歓声や手拍子に口笛は割れんばかりに街中へと響き渡っていった。
続いて歌うバラードは、哀しいラブソングを歌った。

その歌は、ナマエも気に入っていて、共感できる曲で大好きだった。
自分の感情も込めて歌うその歌は、聴いていた人の何人かも涙を流していた。


「えっと、おわりです」

うわぁぁぁーーー!!
パチパチパチ・・・!!


ナマエがそう告げると同時に、更なる歓声が響き渡った。


「これは、結果をまつ必要もないでしょう!」
「は?」
「彼女の優勝だーー!!」

うおぉぉぉーー!!

「あ?マジ?(ラッキー。賞金Getだ!)」
「では、彼女にもう一曲お願いしましょう!」
「えっ、マジ!?」


こうして、早々に大金を手に入れて、音楽業界とも契約して印税も約束されたナマエ。
家に帰ってそのことをじいさんに話すと、すぐさま学校の手続きにとりかかっていた。


「(あたし学校あんまり好きじゃないっていうより、むしろ嫌いなんだけどな)」


誰から見ても楽しそうに、そしてじいさんには思えない程のテキパキとした行動力で嬉しそうにしている姿に、ナマエは胸のうちを明かせないでいた。

明日から、何がナマエに待ち受けているのか。
サーベルタイガーに逢いたいと思いながら、眠りについた。



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