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「あの、すみません」
「何?」
「何故、俺はここにいるんでしょうか」
「あぁ。あんたがこの家の真ん前に転がっていたから」
「ころ・・・・・」
「最初は見なかったことに決めたけど、呻き声あげるからさ。周りの目が痛かったし」
「それは、すみません。ご迷惑をおかけしました」
「いえ、そんなに頭下げられても。な?」


頭を下げる姿に、ナマエは頭を書きながら、言葉を濁した。


「いえ、ご迷惑をかけてしまいました」
「いや、むしろ迷惑をかけたのはじじい、じゃなくてじいさんだから」
「おじいさん?」
「あたしのベッドで寝ている青年を写真に納めていただろう」
「あっ」
「大丈夫。その写真で暴走する前に、取り上げとくよ」
「本当にすみません」


謝りながら、今までずっとベッドの上にいた青年はナマエが座っているところまで近寄ってきた。


「で、何で倒れていたの?」
「それは・・・・・」
「言いたくないならいいけどさ」
「その、えっと、お腹が空いて」
「(やっぱりね)そっか。家どこ?」
「ここの場所が分かれば」
「隣にCCがある」
「あっ、俺そこです」
「へぇ、横でよかったな。直ぐに飯が食べられるじゃん」
「はい。では、ご迷惑おかけしました」
「ちょっと待て」
「あ、お礼は後ほどさせて頂きます」
「お礼云々別にいらないし、今はどうでもいい」


ナマエの部屋の窓から出て行こうとした青年を、当たり前のように呼び止めたナマエ。
どうして、呼び止められたのかがわからない青年は首を傾げるとナマエは口元を引き攣らせながら言い放った。


「玄関から出て行ってくれないか?」
「あっ。いつも窓から出入りしている事が多いから当たり前になっていた。しかも、空飛ぼうとしていたよ俺。あぶない、あぶない。すみません、なんだか混乱しちゃって」
「(全部聞こえた。こいつ天然?)まぁ、気をつけて」


そう言うと、ナマエの部屋のドアから出て行った。
玄関までも見送りをしないナマエは、ドアの横にじいさんが待機していたことを知っていたからだ。
ドアの前でじいさんを見つけてしまってどうしたらいいのか分からない青年は、立ち止まるしかなかった。


「・・・・・えっと」
「・・・・・(汗)」
「「・・・・・」」
「じじい。青年を玄関まで送ってけよ」
「なんでワシが?」
「さっきの事チャラにしてやるから」
「しょうがないの」


手の平を返したように、ナマエの言葉を聞き入れて、玄関に向かおうとしたじいさんをナマエはちょっと待てと止めた。
そんなナマエに、どうしたのか気になった青年はナマエとじいさんを互いに黙って見つめていた。


「な、なんじゃ?」
「デジカメは置いて行け」
「わしの宝物じゃぞ」
「盗撮がか?」
「ちゃんと消しとくから」
「ならいい」
「せっかく楽しみの1つじゃったのに。孫を作らすキッカケにもなると思ったのにの」
「聞こえてるぞ、じじい」
「よし、行くぞ青年」
「あっ、はい。すみません」


こうして、この家から出ることが出来た青年は、そのまま隣のCCへと帰っていった。


「未来からのトランクスね。アイツが居るって言う事は、なんだか原作とは違うのかもしれないな」


ナマエは窓から見える空を見つめ呟いて、すぐに曲のコードを思い出す作業へと戻った。

CCに戻ったトランクスはというと


「ただいま、母さん」
「あら、どこに行っていたの?心配したのよ?」
「すみません。ちょっと・・・(お腹が空いて倒れていたなんて言えないよ)」
「とりあえず、今トランクスと悟天君に悟飯くんが来て、お昼を食べているからあんたも行ってらっしゃい」
「悟飯さんも来ているんですか?」
「そうよ。トランクスもあんたに会いたがっていたしね」
「ははは、自分にそう思えてもらえるのも嬉しいですが、ちょっと複雑ですね」
「そうね。でも、弟と思えばいいじゃない」
「はい」


そう返事してからトランクスは、今は争奪戦という名の戦場へと足を向けようとしたが、フと気になり足を止めて、ブルマへともう一度振り返った。


「そういえば、母さん」
「どうかした?」
「隣の家の人の事なのですが、どんな方か知っていますか?」
「あぁ、おじいさんが住んでいたわね。たまに、父と喋っているのを見かけるわ。それがどうかしたの?」
「あっ、いえ。そこに悟飯さんくらいの女の人とかなんですが、知りませんか?」
「悟飯くらいの女の子?おじいさん1人のはずだけど?」
「えっ?そうなんですか?」
「あー、もしかしてトランクス。その女の子に惚れたの?」
「えっ!そ、そ、そんなのじゃないですって」
「ついにトランクスにもねぇ。いい、男の子なんだから強気で行くのよ!!」
「だ、だから違いますってば!母さん!!」


トランクスの叫びも虚しく、若いっていいわねぇなんて言いながら、ブルマは研究室へと帰っていった。
ブルマの背中を見送った後、トランクスは溜息を吐いてから、今度こそ争奪戦の行われているリビングへと向かった。

トランクスや、悟天に、悟飯と楽しく喋りながらも、必死にご飯を食べているうちに、先ほど気になった事を忘れていた。



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