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「では、みんなちょっといいかな?」
「「「「「「はい」」」」」」


そわそわと家の中を見ている彼らに大人が声をかけると、姿勢を正して大人へと向き直った彼らをみて、子供はやはり自分との態度が違うと思いながら続く大人の話を聞いていた。


「今から貴方達の生活するための必要最低限のものを調達しに行きたいと思っています」
「はいはい!私はこの世界を色々見たい!!」
「はい、自己主張は聞いてないので座ってね」
「むー」
「あの大人さん」
「何かな、潮江文次郎君」
「そこまでして頂くのは申し訳ないですし。自分たちはこのままでも」


文次郎の言葉に同じ思いなのか、小平太以外は声には出さずとも頷いているのが見える。
そんな彼らを見た大人は一瞬睨むように鋭い視線を彼らに向けてすぐに、哀愁漂うように肩を落としながら口を開いた。


「そうか、預かっている君たちにまともな生活をさせていないと噂が流れ、ついに周りから最低な人間とレッテルを貼られ、今まで付き合っていたご近所様にも一歩引かれ、君たちの時代でいうと瓦版になるのかな?そういった号外てき情報が日本全てに出回り、毎日のように後ろ指を指されてしまえと、君達は言いたいのかな?」
「いや、その、そこまでは・・・・・お、おい子供」
「この現代は怖いんだよ。あっという間に噂は流れ、日本中からバッシングの嵐に合うのだよ。外にも出れなくなっちゃう。そして精神的にも耐え切れなくなった私たちはこの世にお別れを・・・・・なんて事もありえます」
「そ、そうなのですか。(未来は恐ろしいな)」
「と、言う訳で、最低限なものを調達しにいきます。異論は認めません」
「はい。すみません。よろしくお願い致します」
「まずは、3組に分かれて欲しいので、分け方は挙手制で行います」


大人の言葉に何でと思いながらもそれぞれ、首を縦に振って同意を示すと、まずはと言葉を続けた。


「直観力の強い人と、運のある人」


そう大人が言うと同時に、ハイハイと手を上げる小平太と落ち込む伊作。
伊作の不運をまだ知らない子供は、ずーんと影を纏いながら落ち込む伊作を見てなんで?とジーと見つめていると、ポンと肩を叩かれ、振り向くと何も言わずに首を横に振る留三郎の姿があり、何かを感じ取った子供はもう一度伊作を見ると、そっとしておこうと心に決めた。


「運か」
「直感は小平太より勝る人はないから決まりだな」
「となると、この4人から運のある人を決めるねぇとな」
「3人だろ」
「いや、4人だろ」
「「「・・・・・(じー)」」」
「なんでコッチを見るんだ!!」
「もそ・・・・・同室」
「だな。同室だからだ」
「あぁ、同室だしな」
「うっ」
「・・・・・っ(すまない留三郎)」


追いつめられるような留三郎の姿に、さらに涙ぐんで落ち込む伊作。
そんな彼らを見て、子供は思う。何この空気。
今、彼らの輪には絶対に入りたくないと思って、大人さんを見ると、大人さんは物置としているクローゼットを漁っていた。


「・・・・・(うん。私も大人さんの方に行こう)」


やいや、やいや
なー、まだかー?暇だぞ
邪魔だ、あっちに行ってろ!
あーでもない、こーでもない
元気だせよ伊作
どーせ、不運ですよ


「ふむ。長次だな」
「あぁ、異論はない」
「・・・・・分かった」
「やっと決まったんだね」
「おまたせしてスミマセン」
「なら2人は、この服を着てね」
「「・・・・・」」
「早く」
「んー?」
「・・・・・着方がわからない」


服を手に取って、動かない二人に催促すればそう言葉が返ってきた。
面倒臭くなったのか、子供を呼んだ。


「(こっちにしわ寄せが来た)着方を言うから、言うとおりに着て」


そう言いながら子供は和室へと彼らを連れて行くと、口頭で着方を教えていく。
分からないところはもう一度聞いてねと言いながら、和室を背にした。



最初の外出まで、その2(END)

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