08



「でも、どうして・・・・・」
「仕方がないよ。ご都合主義って事みたいだしね」
「え?」


あまりにもあっさりと了承してしまった大人にどこか納得ができない子供は、こっそりと大人のところまで行ってどうして了承したのかを聞こうとしたのだが、大人はいまだにPCのキーボードをカタカタと叩いてはマウスを動かしている。

休日にそんなに見ることはあるのだろうかと不思議に思いつつも、訪ねると上記の答えが返ってきた。
適当に発した言葉を聞き返すように声を出したのは子供だけではないようで、彼らも耳を傾けていたらしい。


「あの、名字さん」
「あぁ、大人で構わないけど、年齢もあるし敬称はつけてね」
「はい。では、改めて大人さん」
「はい。あー?えっと、名前聞いたっけ?」
「これは、すみませんでした。私、立花仙蔵と申します。大人さんの呼びやすいように呼んでいただいて構いません。それで、ご都合主義とはどういった意味でしょうか?」


最初にチラッと仙蔵を見てからは、会話をしていてもPCから視線を外すことはなかった大人が、初めて仙蔵の顔を見ると、眉を軽く寄せている姿だった。
軽く周りも見ると、小平太以外は皆似たような顔つきをしていた。

まぁ、確かにあんなにあっさりと疑うことなく受け入れても、忍者目指してる子たちだし信じにくいよな。と心の中で思いながら、それはと口を開いた。


「ご都合主義というのは、お前たちの世界が消えたという事かな」
「なっ!?」
「うそっ」
「っき、消えたとはどういう事でしょうか?」


軽く発した大人の言葉に顔色を変えたのは仙蔵だけではなく、会話を聞いていた彼らも子供もだった。
そんな彼らの反応を見て、違う違うと手を前にだして、彼らの思考停止を試みた大人は、つまりねと言葉を続けた。


「消えたというのは、皆の頭の中から消えた。つまり、言葉にすると難しいな・・・・・まぁ、あれだ。この世界で貴方たちがいても、キャラがこの世界にいるとは思わないようになった」
「それでも、私たちを養う理由にはなりません」
「ん〜。多分そうなるように仕組まれてる感もあるし、そんなに気張らないでいいんじゃない?」


話進まないし、それにコレと言って、今まで見つめていたPC画面を見えるように見せると、そこには【少しの間お願い致します。 学園長 大川平次渦正】となぜか習字体で書かれた文字画面になっていた。


「「「「「「が、学園長ぅぅーーーーー」」」」」」
「え、どうして?」


驚きに声をあげる彼らに、大人は気にせず画面をスクロールさせて、文字を出していく。
そこには【知人の曰くつきの掛け軸をもらったことが全ての始まりになる。聞くところによれば、大層面白そうな内容じゃったが、わしが少しの間学園から居なくなるのもどうかと思い、もうすぐ忍びの世界へと旅立つ彼らに少しの息抜きとして普通の人としての時間を過ごして欲しいと思ったのが、今回の事態の発端になる】

と次の画面に書いてある言葉を読みあげると、学園長と誰かからの声が感動しているのか小さく漏れた。

【彼らに内緒で勝手に決めた事はすまない。が、興味はあるので中止などするつもりなど毛頭なかった。おもしろそうなので、帰ったら是非に感想を聞かせてくれ。
ちなみに期間はそちらで1ヶ月じゃ! 以上】

最後まで見た瞬間彼らは、芸人顔負けのごとくコケた。


「って訳で、ご都合主義だけど、すごいな。すごいのは学園長かな?ってか、掛け軸クオリティはんぱないね」
「大人さん楽観的だよ」
「そういわないの子供。では、一言」
「何?」
「君たちは今日から少しの間この家の一員です。つまり子供のように扱うし、手伝ってももらう。私が君たちの保護者だということを頭に刻みなさい」


大人が言い切ると、彼らは顔を見合わせて本当に安心した顔で大人にありがとうございますと少年らしい顔つきで言い切った。


「よかったね。みんな」


子供も嬉しいのか、みんなと笑い合っていた。


「ちなみに、君たちは子供より年下という事は、立場も子供より下だからね」


その言葉で彼らから笑顔が数人から消えた。



結局巻き込まれただけ(END)

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