05



「だから大人さんと、ちゃんと会話するのは無理って、見つからないように早く寝てって、言ったじゃないですか…」
「あぁ。俺たちが悪かった」


面倒くさく思いながらも、客室に寝てもらうために皆にも手伝ってもらいながら布団を敷いていた時に、玄関から物音が聞こえてきたのが始まりだった。


「むっ」
「誰か居るな」
「こんな時間にか?」
「怪しいな」
「侵入者かもしれないぞ」
「子供ちゃんはとりあえず隠れといてね」
「いやいや、怪しくないから、きっと大人さんだから」
「大人さん?」
「言ったじゃん!さっきもうすぐ帰ってくるって、私言ったよね!?」
「言っていたな」
「とりあえず、今日はもう寝て下さい。そしてこの部屋から出てこないで下さい」
「何故だ?」
「それも言った!話が出来ないからって!ちょっと、この部屋から出て行かないでよ!!」
「うわっ、子供押すな」
「玄関の扉が開いたみたいようだな」
「優雅に解説なんてしなくていいから、立花君も部屋に籠ってよ」
「わはは、子供挨拶は必要だぞ」
「今は出来ないから、早くぅ」


わいわいしながら客間の和室へと詰め込むように押していたが、彼らをドンと思いっきり押した時、不運は発動した。


「うわっ」
「お?」


何に躓いたのかは定かではないが、こけた伊作は目の前にいた小平太を巻き込んだ。
残りの四人は客間から(流石不運だな)とのんきに見つめていたが、リビングの扉が開いて、一人の女性大人が入ってきた。

そして、子供は最悪だと思うしかなった。


「ありゃ?子供まだ起きていたの?寝ててよかったのに」
「う、うん。今寝ようかと思ったとこ」
「そっか、そっか。いい夢みなね」
「うん」


ニコニコと子供と会話をしている大人を見て、話せばきっとわかる人かもしれないと思いつつ、大人を観察していたが、大人の視線がリビングに取り残された二人へと移った。


「で、それは?」
「えっと…」
「ん〜?」
「「……(どうしよう)」」
「(ダメだ。普通に見えるようだが、私にはわかる大人さんはもう限界を超えている)」


陽気な雰囲気のままの大人に、どうしようかと座り込んだままの二人は、口元を引き攣らせていたり、楽しそうにじっと大人を見つめていたりと、対象の顔をしていた。
そんな二人に近づいて行った大人は、二人へと手を伸ばしてきた。
ここでは、危険なことはないと言われていたが、今まで染みついた習慣などから、大人がどうするかと警戒をしながら成り行きを見ている二人に、二人に何かあったらとそれぞれが武器へと手を忍ばせて見守る四人。
そんなこととは知らずに、とりあえず額に手を当ててどうしようと悩む子供だったが、まずは水かなと思い、キッチンへと足を運ぶべきかと考えていた。

そんなみんなの思いなど知るはずもなく、大人は二人の頭へと手を乗せると、わしゃわしゃと撫で始めた。


「お〜、よしよし」
「「……(ぽかーん)」」


その大人の姿を覗いていた四人は気を緩め、二人をなにも疑わずに接する姿から、きっと話せばわかる人だと思ったのだが、その思いも一瞬で崩される。


「あっはっはっ、こりゃまた立派な大型犬だ。大きいねぇ。子供が拾って来たのか?」
「え、えっと、大人さん?」
「んぁ〜?」
「何でもないです(やっぱりね。今日は特にダメだ)」
「それそれ、よーしよしよし」
「へっ(えぇっ、うわわっ)」
「おっ(むー。くすぐったいぞ)」


そして大人は、頭だけでなく、全身もわしゃわしゃと撫でてから、ポンポンと二人の頭を叩いて立ち上がると、歩きだしてある場所で止まると敬礼をした。


「これは、お疲れ様です。いやぁ、今日も貫禄がおありで、へへへっ…素敵ですね」


よ、日本一などとヨイショをしている大人を見ながら、六人は子供へと小声で疑問を持ちかけた。


「おい、どういうことだ」
「彼女は何をしているんだ」
「あの、僕犬と間違われたのかな?」
「私も間違われたぞ」
「もそもそ・・・・・あの行動の意味は」
「子供が、話ができないと言った意味はもしかして」
「立花君の推察の通りです。大人さんは見た通り、ガッツリと酔っています」


そう子供が宣言したあと、もう一度大人を目に収めると、先ほどまで話しかけていた土産でよくある熊の木彫りの置物ではなく、壁際に掛けていた洋服を目の前で、楽しげに会話をしていた。


「あそこまで酒に酔うとは」
「ちょっと、留さん声小さくしなきゃ」
「おっと、悪い」


楽しく会話をしていた大人だったが、今の声が聞こえたのか、フラフラとしながら客間の方へと向かってきていた。
それに気が付いたみんなだったが、もうどこにも隠れる場所はなく、どうしようかと子供を見たが、諦めている目をしてため息を吐いている子供の姿を見て口元を引き攣らせることしかできなかった。
そして、少しだけ閉めかかっていた襖を開けた大人はそこにいる子供と六人の姿を目に止めた。


「お?」
「「「「「「…」」」」」」
「お客様がいらしたのですかぁ」
「そ、そんなんだ大人さん」
「これはこれは、気が付きませんで」


申し訳ありません。と、深々と頭を下げる大人の姿に六人は慌ててお邪魔していますと六人も頭を下げていた。


「あの大人さん、皆様今から」


お休みになる所と続けられる子供の言葉は、飲み物もお出ししないなんて。という大人の言葉に遮られた。


「いえ、その、お構いなく」
「いいえぇ。飲み物を出すことくらいさせて下さいな。少しくらい雑談どうですか?いやぁ、私貴方たちとの会話もせずに蔑ろにしていたせめてものお詫びですので」


では、少しだけと言葉を濁して、六人はもう一度リビングへと向かう事となった。



引き攣る顔には気づかない(END)

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