一緒にしたいことは



「今日はオラと一緒だって言ったじゃねぇか」


そう言って拗ねるのは、いい年こいた大人のはずの人。
彼の名前は孫悟空。


「だから、無理だって言っているでしょ」


そう言葉を返す女性。
彼女の名前は名前という。

彼らは今日一緒にいることを約束していて、その約束を守れずに名前が急遽無理と言って喧嘩している・・・訳ではない。
真相は至極簡単だった。


「なんでだよ」
「って言うか、今一緒に居るでしょうが!!」


そう。彼らは今特に何もない草原でゆっくりとした時間を過ごしている。
先程までは穏やかで、とてもいい感じだった。

そう、先程まで・・・悟空が無茶を言い出すまではだ。


「なぁ、頼むからさ一緒に修行しようぜ」
「だから、無理だって言っているでしょ!」
「ほんの少しでいいんだ」
「少しでも無理なの。私一般人よ? 瓦一枚割れない普通の人間なの」
「でぇじょうぶだって」
「どこにそんな証拠がありますかぁ!!」
「なぁ名前」
「絶対に嫌だからね」


どこで知り合ったのかはあえて伏せますが、とにかく知り合った二人は意外と仲がよく、たまに悟空の我儘を聞いたりしていた。
もちろんチチさんとも仲がよく、嫉妬の嵐を向けられるかと思いきや、名前さすまねぇこったなと言って何故か友好的。

だいたい超一般庶民の名前に、空を飛び、山をも簡単に消し飛ばす力を持っている人と時限が違うはずなのに、手合わせしてみねぇか? などと言ってくる悟空は明らかに名前の寿命を縮めている張本人であろう。


「手加減すっからさ」
「悟空さんが手加減しても、私死んじゃいますよ」
「そんなこと気にしていたのか?」
「(死ぬ事はそんなことではないよ、悟空さん)」
「もし死んじまっても、シェンロンが生き返らせてくれっぞ」
「(誰!? シェンロンって誰のこと!?)ちょっ、もしって何? もしって何!?」
「いや、えっと・・・」
「そんなハイリスクを背負ってまでやりません」
「大丈夫だって、な?」
「どこが!!」


イヤだと拗ねて、草原に横たわった名前の肩を揺さぶって未だに、なぁ名前〜などと言い続ける悟空に、少し呆れ始めた名前。


「あぁ、もう!」
「お、やっとやる気に「なっていませんから」」


しつこいと言いたげに起き上がった名前を見て、少し嬉しそうな顔をしていたが、名前の言葉を聞いてまた落ち込みを見せた悟空の顔に、名前は溜息をはいて、そっと悟空の頭に手を置いた。


「悟空さん」
「ん?」
「今慌てて修行をしなくてはいけないのですか?」
「別にそうじゃねぇけど」
「なら、ゆっくりしましょう」
「何もしないのは名前がつまらないだろ」
「(悟空さんなりの気遣い・・・だったのかな?)私はこうやってゆっくり時間が過ぎるのを感じる事が好きですよ。悟空さんは嫌いですか?」
「いや、名前と居るのは楽しいからオラも好きだ」
「なら、このままでいいじゃないですか」
「・・・たまにはこういうのも、いっかな」


そう言って、二人で寝そべって風を感じていた。

が、また1時間毎にあまりに会話が少なくて物足りなくなった悟空と同じ事を繰り返す羽目になるとは今の名前はまだ知らない。


END

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