君を知りたくて



×月△日天候は雨。

いっそのこと嵐にでもなってくれればと思ってしまう今日。
明後日に控えたレコーディング曲のお披露目のために、好きだった曲を思い出しながら目の前の紙に少しずつ書き足され、紙も増えて完成されていく。

が、あたしの苛立ちも徐々に増えていた。

それは朝へと遡る。
ラブソングではないが、応援ソング的なものを思い返して書いていて、それを出そうと思っていたからこそ、打ち合わせまでの数日間はダラダラ過ごせると思っていたのにと、心の中で呟くと溜息を吐いた。


「なんじゃ、溜息なんて若さが逃げるぞ」
「若さじゃなくて、幸せな」
「一緒じゃろ」
「いや、違うだろ」
「いやいや一緒じゃ。元気が無くなる=年老いるじゃ」
「無理矢理だな。大体じじぃは年老いても元気じゃねぇかよ」
「フォッホッホ・・・」
「おかず飛んでるから、食べながら大声で笑うな!」


おっといかんいかんと言いながらご飯を飲み込むと、じじぃにとって面白い事がないのか、溜息をついた訳を聞いてきたが、何故だろう・・・あまり言いたくない。
が、言わなければ事が進まない。


「あれだ。仕事の方でちょっとな」
「トラブルか?」
「ちょっと違うけど、歌詞を作れってさ」
「いつもの事じゃろうが」
「それが、電話が来てさ急遽ラブソングに変わってさ、ラブソング書かなきゃいけなくてね」
「苦痛なのか?」


少し心配そうにして聞いてくるその表情に、余計な心配をかけたなと思ってしまった。


「歌詞に困っておるんじゃろ? ワシにまかせればよい!」


が、そんなものじじぃには必要なかった事を一瞬でも忘れてしまった自分が何よりも憎たらしい。

そう思っているのもつかの間。
じじぃの行動は早かった。


「安心するがいい。ラブソングをかけないのは恋愛をしていないからじゃ!恋愛をすれば、いいのが書けるはずじゃからな。今青年達を呼んだからがんばるんじゃぞ」


親指を立ててウインクを向けてきたじじぃを殴りたいと思ったのは、コレで何度目になるのか・・・両手では絶対に足りない程あったと思う。

一分後にチャイムが鳴り、玄関を開けようとしたが、ガタガタと壊れるような勢いを奏でる目の前の扉からとりあえず開けることを止めて、離れて見つめていると勝手に無理矢理開けられたその玄関の先には、紫の髪が二つ。


「名前さん!」
「名前姉!」
「「大丈夫ですか/かよ」」
「あぁ?」


何を吹き込まれたのか、何故こんなにも二人が慌てているのか知りたくもない。


「・・・・・あんのじじぃが」
「「名前さん/姉?」」
「何言われたかは知らんが、玄関直してくれね?」
「「あ。・・・はい」」
「よろしく」


二人にそう言い付けると、困った顔をしながら玄関を直そうとがんばっていた。

その姿をしっかりと見届けてから、自分の部屋へと戻っていった名前だったが、名前の災難はまだ終わっていなかった。

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