一緒に居たい相手



「(ホラじゃねぇだろうが)おかしいと思わなかったのかよ」
「景から聞いたのかと思った」
「はぁ・・・もういい。で、なんで神奈川に行ったのか聞かせてもらおうか。それに、行くなら一緒に行けばいいだろ」
「だって、今週末は練習試合だって景が言ってたからさ、テニスを重点にがんばってもらおうって思って・・・」
「って、そんな気を使う仲でもねぇだろうが」


そうだけどさーとブツブツ言う名前が、いつもと同じで、ココにいてくれてどこか安心した俺がいるのは確かだ。
本心を言えば、名前に嫌われたかとも思った。

だが、心当たりが無くて、何かしたかと聞くようなメールや電話さえもする勇気がなかったし、テニス部仲間にそんな俺の姿は見せたくもない。
こんな少し弱気になってしまう俺は名前だけがさせる姿だが、こんな俺も嫌いじゃないとどこか思ってしまう。


「・・・・・・という訳で、神奈川に行っていたのさ」
「あ、あーん?(やべぇ、回想に夢中で、名前の話聞いてなかった)」
「おい景。その反応は聞いてなかっただろう」
「な、な、何言ってやがる。聞いていたに決まっているだろうが!」
「いんや、聞いてないね。なら、神奈川に行った理由言ってみ?」
「・・・・・・中華街に行きたかったからだろ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・ぐぁっ」


鈍い音をたてて、俺のわき腹へとキレのあるストレートが決まった名前の拳は、思った以上に痛かった。
一週間前とは雲泥の差がある。


「ものすごく腕を上げたな名前」
「あたぼうよ、何て言ったって日吉直伝だからね」


日吉が余計な事をしやがって!と心の中で思いつつ、もう一度神奈川に行った理由を聞いた。


「だから、転校するらしくて、家族ぐるみで新しい家の物件を探していたんだって」
「なっ!!て、て、て、転校だとーーー!!」
「ちょい、鼓膜破れるから耳元で叫ばないでくれ景」
「なんでだ、なんで転校をする!お、俺が嫌いになったのか?」
「なんで嫌いになるんだよ。そんなすぐに嫌いになるような軟い仲ではないじゃん」
「なら、何故」


家の事情としか私も親から聞かされなかったといって、頭をかく名前にとりあえず嫌われていないことは分かった。
そして、今まで転校の事を黙っていられたのがショックだった。


「どうして、俺に転校の事言ってくれなかった?」
「景?」
「俺らって、今までも何もかも言って秘密なんか無かっただろうが」
「・・・・・・」
「後、名前はいつ転校するんだよ」
「明日」
「なっ!!」
「じゃ無い事は確かだ!あっはっは、ねぇビビッた?ビビッた?」


カマをかけられたことに気がついて、無償に腹が立つ。
そして何より指を指して笑いつづけるからか、なおの事悔しい。

俺は名前の指をグイッと背けて、顔を歪めた名前にお構いなく、指は離さずに聞きたかった事を聞いた。


「なんで、言ってくれなかったんだよ」
「だって」
「親友だろうが」
「だからだよ」
「あん?」
「親友だから、今みたいな顔させたくなかったんだよ(本当は伝えたと思って忘れていただけ。だったり?)」

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