悪夢
最初に異変に気付いたのは、
登校してきて教室に入ってから。
教室に誰も人がいない。
そういえば、登校中にも誰にも会わなかったし、
学校に来てからも誰ともすれ違っていない。
おかしいな、今日休日だっけ?
でも、門は開いてたしな…
そんなことはないはず。
確認のため職員室にも行ってみたが、
先生でさえも一人もいなかった。
『なんで?…もしかして時間、間違えた?』
腕時計を見てみるが、
いつも通り針は8:10をさしていた。
なんなの…これ。ちょっと怖いよ。
いや、ちょっとどころじゃない。
かなり怖い。
…そうだ。
部室に行けばがっくんとかいるかな?
よくあの人たち部室にいるし。
よし、行ってみよう。
自分の足音以外の音がしない、静かな廊下を通って、
ひんやりとした階段を降りて、部室に向かった。
…部室に着いたが、予想通やっぱり
部室中からは人の気配は感じられなかった。
人がいないのは分かっていたけど、
やっぱりこの目で確かめないと気が済まない。
そう思って、
ドアノブに手をかけたとき、異変に気が付いた。
中で黒い影がモヤモヤと動いている。
最初は誰かいる…!と思って、
少し安心したが、それも束の間。
これは明らかに人間でない。
いや、形はどうみても人間なんだけど、
なんていうのかな…。影、だけなんだよね。
普通、物体があるから影が
できるものなんだけど、
そこは物体がないのに人の形の影がある。
しかも、複数。
ヤバいよ、これ!本格的に…っ!
逃げろ、と頭では思っているのに、
恐ろしくて足が震えて前に進まない。
─────パキッ。
『あ…。』
…やってしまった。
少しさがった拍子に
足元の木の枝を踏んでしまったのだ。
中で動いていた黒い影がピタっと止まった。
そして、一斉にこちらを見た
…気がした。
気がついたらさっきまで
震えていた足は猛スピードで走り出していた。
中学校の中に入ったところで
誰もいないし、行き止まりになるだけだ。
…もしかしたら、
高校の校舎には人がいるかもしれない…っ!
『だ、だれかぁぁあぁああぁっ!』
声を張り上げて叫んだ。
…けど、ここも人の気配なんて全くしなくて。
『本当に…っ、なんなの…っ?!』
こんなに全力疾走したのは
生まれて初めてかもしれない。
『…っ、はぁっ…はぁっ……っ』
さすがにもう大丈夫…だよね?
一気に4階まで上がってきて、
私の体力は限界だった。
その場に膝から崩れ落ちて座り込んだ時、
すぐ近くに、自分の影と、また違う影が見えた。
『──っ??!』
影はだんだん近づいてくる。
嘘でしょ、なんなのよ、これっ!
『こないで…っ、こないでーっ!!!』
腰が抜けて立てない。
うしろに腕をついた時に、
ひんやりとした物が手に当たった。
『…鎌?』
それは、本で出てくる
死神がもっていそうな鎌。
なんで、学校の廊下に
こんな鎌が転がっているのか
なんて考える余裕はない。
もう気がつくと影は目の前まで迫っていた。
もうなりふり構ってられない。
私は目を思いっきり瞑って、
影にめがけて鎌を思いっきり振った。
『『いやぁぁあああぁあぁぁああっ!』』
気がつくと、そこは家のベッド。
時計を見ると、5:30。
ちょっと早めの朝だった。
『…ゆ、め…だったの…?』
背中にてをやると汗でぐっしょりしていた。
夢、だったんだ。
『…よかっ、たぁ……。』
二度寝する気分ではなかったし、
汗が気持ち悪かったから
とりあえず朝風呂に入ることにした。
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