星の金貨




ジャッカルって言ったら
立海一お人好しで、
立海一優しくて、
立海一苦労人で、
立海一いい人だと思うんだよね。



ほら、今日もまた…



「うぉーい!ジャッカルーっ!お前は飴持ってたよな?くれよーぃ。」
「もう一つしかねぇんだけど。……わーった、ほらよっ。」 
「さんきゅー!助かったぜぃ。」



彼の手持ちのお菓子は
恐らく全て丸井のお腹の中に消えていく。
そして赤也が一緒の時はお金も共に消えていく。


 

廊下を歩いてると後ろからあの人が…


「ジャッカル、何飲んでんじゃ?俺にもちょっと分けてくんしゃい。」
「カフェオレだけど?ほれ。」
「ん、さんきゅ。」



ジューー



「あ、てめぇ!全部飲んだだろ?!」
「プリっ」



お次は仁王雅治。

彼は神出鬼没。
その時によるけど、とりあえず何かを奪っていく。
今日は飲み物だったみたい。




教室に入ると、



「なぁ、ジャッカル。俺さ、今日、シャーペンを忘れたんだよ、貸してくんね?」
「いいぜ、はい。」
「さんきゅ…うわ!何、このシャーペン使いやすっ!ちょ、これ譲ってくれよ!」
「はぁ…?」
「な、頼む!」
「………わかった、やるよ。」



教室でも、こんなこと日常茶飯事。

あれはたしか、ジャッカルのお気に入りの
シャーペンだったはずなんだけど…



自分の事より相手の事をいつも考えてて…。

本当に人として出来過ぎてるんだよ。


授業が終わり、
そして部活も終わり、

部室では…


「ジャッカル。」
「…?なんだ、柳?」
「今日はどうしても外せない用事があってな。戸締まりの当番を代わってもらえないだろうか?」
「…あぁ、いいぜ。鍵そこに置いといてくれ。」
「助かる…。来週はジャッカルの分を俺がするからな。」
「いーって、いーって。じゃあな、気をつけて帰れよ。」
「ああ。」



ねぇ、ジャッカル。
今日は毎週ジャッカルが見てる音楽番組の日だよね?

当番なんかしてたら間に合わないよ?




…ジャッカルは、優しくてお人好しで。

でも私にはそれが必ずしもいいとは思わない。

だってジャッカル損ばっかりしてるもん。

そういうのって、不平等じゃない?




『ジャッカル。』
「名前じゃねーか。まだ帰ってなかったのか?もう暗いぞ。」
『んー…いーの。ジャッカル待ってる。』
「遅くなるぞ…?」



まーた、人の心配ばっかり。

悪いな、急ぐからな、って
ジャッカルは急いで部誌を書き始めた。


 

『…ねぇ、ジャッカル。星の金貨って話、知ってる?』
「…いや、知らない。」
『貧乏な女の子がね、服と靴とパンだけを持ってたの。』
「うん。」
『歩いてると、お腹をすかせた子がいてね、一つしかないパンをあげちゃうんだ。』
「…へぇ。」
『もっと歩いてると裸足のお爺さんがいてね、足を怪我してたから一足しかない靴をあげちゃうんだよ。』
「…とんでもねぇお人好しだな。」




ね、ジャッカルみたいでしょ?


『ふふ、そうでしょ?最後はね服のない男の子に自分の服をあげちゃうの。』
「…えぇ、無一文じゃねーか。」
『そ!でもね、無一文になった女の子に、空から星の金貨がいーっぱい落ちてくるの!そして、女の子は幸せになりましたとさ。』
「へぇ…。自分のしたことは自分に返ってくるってことだな!」




優しく笑ってそう言ったジャッカルには、
純粋そのもので、
私はそうだね、としか言えなかった。


自分みたいだ、とか思わないのかな?

…あぁ、そっか。
ジャッカルにはまだ、金貨が降ってきてないんだね。



『ね、ジャッカル?ジャッカルは何が欲しい?』
「…え?なんの話だ…?」
『私が星の金貨をあげるの…』
「は…?」
『んもーう!今の話の流れで分かるでしょ?!』
「えぇ?」
『お菓子も飲み物もシャーペンもお金もぜーんぶあげちゃった無一文ジャッカルに、私が星の金貨をあげるって言ってるの!』




ジャッカルは数秒間、
私の顔を見てポカンとしていたけど、

我にかえると大笑いし始めた。


「ぷっあははははははははは。」
『な、なに?!///』
「いやいや、可愛いな、って思って。」
『…っ!?』
「はは、ありがとな。そうだな、なんでもいいのか?」
『い、いいよ!なんでもこいっ!』
「…じゃあ、そうだなー…。」



ジャッカルはうー…ん、て
机に肩肘をついてこっちを見ながら
考えてる…フリをしてたけど、

この笑い方だから、
きっともう決まってるんだ。


『う…な、なに?』


いつもの優しい笑顔で笑って、
ジャッカルは私にこう言った。




「明日、お前の1日俺にくれよ。」
『…明日?時間、私…え??』
「はは、そんな構えられても困るんだけどな。まあ簡単に言えば、俺に明日付き合ってくれよってことだよ。」
『あぁ、そう…そっか。全然構わないよ?』
「ありがとう、助かったぜ。」




デ、デートのお誘いかと思って吃驚しちゃった…。

きっと、今日なくなった、
シャーペンの買い出しとかだよね。


ちょっと、残念だなぁ。



『じゃ、じゃあ明日ね!』
「おう。昼飯食ったら連絡してくれ。迎えに行くからよ!」
『…うん。』


なにはともあれ、
休みの日にジャッカルと会える口実が
出来てラッキーだったな♪


うんとオシャレを、していこう。


そんなこと考えながら、ちょっと外の明るさを見ようと
部室のドアに手をかけた時、



『…なぁ。』
「…なぁに?」
『俺がさ、もしまた何かいいことすれば、お前がその星の金貨ってやつくれんのか?』
「…え?」
『いや…何もねぇ、忘れてくれ。』



そう言ってまた部誌に目を戻しかけたから
急いでジャッカルの腕を掴んだ。



「う…ぉ?!」
『あ、あげる、あげるよ!いくらでもあげるっ!!むしろ今すぐもっとあげてもいいよ!』


ジャッカルは目をまん丸にして驚いてる。

今日、この顔を見るのは二回目。



「なんでもいいんだな?」
『もちろんっ!』
「本当になんでも?」 
『当たり前だよっ!』



私がそう言い切ると、
ジャッカルはまたあの優しい笑顔で




「…そうか、じゃあ
      俺の彼女になってくれないか?」








∵あとがき
 ジャッカルの夢を
 ずっと書きたいと思っていたので
 やっと書けてよかったです。


 執筆 2013.08.26



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