「……寒い、なぁ……。」
この寒さを凌ぐ術が見つからないまま、私は身を震わせた。
……なんで、こんなことになったんだっけ……?
ただただ耐えることしかできない私に残されたのは考えることだけ。
そして考えるのは、今に至るまでの経緯。
……それは至極明白で、分かりきった事だったような気もするし、
もしかしたら理由なんて言うのもないのかもしれなかった。
もはや、今の状態に理由なんて必要なかった。
ただ、私は俗にいう廃棄区画にいて、そこで寒さに震えている。
それだけのことだった。
分かりやすいなぁ……。
なんて一人考えていたことに笑ったり。
これからどうすればいいんだろう……。
これからのことについて打ちひしがれたり。
……ひとりぼっち、は嫌、だなぁ……。
今の自分を、嘆いたり。
地面に座っていた私の体はひしひしとその地面からの温度を受ける。
一層冷たさを増したそれになんでだろうと顔をあげた。
「雪……?」
そう、それはまさしく雪。
しんしんと降ってくる雪は白く、冷たかった。
そして、この世界であまり見たことのないそれに、少し嬉しく思うのと同時に、
なんで今なのかな、と涙が出そうになった。
もし、今じゃなかったら、きっとただ、嬉しかったのに。
それは今ではただ私の体温を奪い取るような凶器にしかならないのに。
そこまで考えたとき、いよいよ溜まっていたものが溢れ出す。
……涙を流したところで、何も変わるわけじゃないのにね。
ポタリと雫が落ちるのを見ながら自嘲気味の笑みを浮かべるしかなかった。
そして、ふわりと落ちてきたその白を掴む。
美しいけど、塵だというこの白。
優しいけれども凶器になるもの。
……なんだかその雪で最期を迎えるのも悪くないんじゃないかなと思えてきた。
この雪で命を終える人間が今、この日本に何人いるんだろう。
もしかしたら私だけかもしれないなぁ、って思うと、すごく神秘的に思えてきた。
美しさを持ったそれは命をも奪う毒になるなんて、一体今、何人の人間がそれに気づいているんだろうな。
そのことを知った私に少しだけの優越感。
そして、そんな神秘的なもので最期を迎えれるという―――……
「……おや、君は―――……」
ぼんやりと薄れていくような意識の中で、最後に見たのは真っ白い色。
そしてそれに映える金の色。
その姿は―――……
「――――――……」
口に出した言葉は、届いていたのかな。
私の前に奇跡のように舞い降りたのは
白い天使でした。
それはまるで、雪の白と一緒に溶けて消えて、なくなってしまうのではないかと、錯覚してしまう位に。
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