好きな人の前では、格好良くいたい、とか。 あの子の前で、情けないところ見せられない、とか。
男というのは見栄ばかり気にするもので、相手が自分のどこを見て好きになったのか、そういうのを気にしたりしない。良いところばかり見て、ある時相手の情けない場面を目にした時、幻滅するのは、それは本当に相手が好きだったワケではないと思うのだ。ただ、一緒に連れて歩くのに良い、と考えるだけであって。
本当に好きならば、相手のどんなところも受け入れる。少なくとも自分は、俺は、格好良くいようと躍起になって、逆にそれが空回りして失敗に終わる姿を見ても、全然幻滅なんてしない。むしろ、自分に対して格好良く見せたいと思う相手が、面白くて、可愛くて仕方がない。
だからほら、今目の前で歩くコイツが、
「ロックオン、そっち歩いてたら濡れるから」
と言って、雨で水が溜まる車道側を歩く俺に代わって、自分が車道側になったその直後、
バシャアアアアッ!!!
と、軽快な水音と共に、自分が先ほど言ったように車によって飛ばされた水が全身にかかり、ぽたりぽたりとこの寒空の下水浸しになる姿も、
「……ほらね?」
と言って、風に吹かれて震える身体を抑えつつ、あはははと涙目になって笑う姿も、
「……本っ当、馬鹿だよな、お前は」
愛しくて、仕方がない。
2010/12/30 23:43
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