「ロックオン先生!これ私の手作りなの、食べてね!」

「先生!私もケーキ焼いたんだ、上手く作れたから絶対美味しいよ!」

「先生私もー!」


「うおっと。はいはい、わかったから皆落ち着けって」


ちゃんと貰うから、と曇り一つない満面笑顔で女子生徒に囲まれているのは、言わずもがな、皆大好きロックオン先生だ。
00学園は私立であるが校風は自由で、生徒がバレンタインに託けてチョコを持ってきても咎めはしない。むしろ自分を慕っている生徒達が用意してくれたチョコを、誠意を持って受け取っていた。

そしてそんなバレンタインの朝一番に生徒から囲まれたのがロックオン先生だ。そしてそんか光景に対し、手も足も出せない人物が一人。遠くで見守るイフィリアだった。


「くっ……生徒が多すぎてロックオン先生にチョコ渡せねぇ!俺も今日は殆ど授業入ってて、渡せんのなんて今しかねぇのに…!こうなったら、」


俺もあの女子生徒に紛れてチョコ渡すしかねぇ!!と意気込んで走り出そうとした瞬間、


「「「イフィリア先生!!」」」

「っ、へ?」


何とイフィリアまでも、多勢の女子生徒に呼び止められ、あっという間に囲まれた。


「イフィリア先生!私自分でクッキー焼いたの!食べてね!」

「先生私は生チョコ作ったの!」

「私はマフィン!」

「私なんてガトーショコラよ!」


食べてね!と可愛らしい笑顔と共にチョコを渡され、万更でもないイフィリアの口元に笑顔が浮かぶ。


「おっ、おぉ、サンキューな。有難く頂くぜ」

「先生もお返しは手作りね!」

「全員分のか!?」


かなり厳しいだろう!と苦笑を浮かべるイフィリアに、冗談だよーと女子生徒の笑い声がわっと響く。
ううーん、確かに年頃の女子生徒に囲まれるのも悪くないな。

明らかに気の抜けた笑顔を向けて会話をしていたが、突如背中を駆け抜ける冷たいものを感じ、肩を震わせて振り返る。見れば、先ほどまでにこやかにチョコを受け取っていたロックオンが、じとー…と未だ生徒に囲まれながら冷たい眼差しでイフィリアを見ていた。

そして次の瞬間、


「ぶふっ!?」


突然腕を振りかぶったかと思えば、なんとナイスコントロールと言わんばかりにイフィリアの顔面に何かを投げ付けた。予想外だったため避けることも出来ず、見事顔面クリーンヒット受けたイフィリアは顔を押さえて悶絶する。けれどそれが何だかわかった途端、その表情はぱっと花開く歓喜のものに変わり、


「ロックオン先生っ俺も!!大好きですーっ!!」

「そんなことひとっことも言ってないだろう!!」


鼻を真っ赤にさせながら、イフィリアは胸に抱く生徒からのものとは別の、緑色のラッピングをされた箱を片手に、ロックオンに抱き付いた。

2012/02/23 16:44


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