「シン、次こっち!」
「分かったから、落ち着けよばーか」
受験を終えて無事大学に合格したシンは、約束通り私を動物園に連れて来てくれた。
「うわー!可愛い!!」
小さな子に紛れてしゃがみ込み、触れ合いコーナーで小動物を抱き上げる。 ふわふわしていて気持ちいい。
「ねぇ、シン!可愛い!!」
抱いていたうさぎを呆れた目でこちらを見ていたシンに差し出す。
「…お前、いくつだよ……」
そう言いながらも隣にしゃがんできちんとうさぎを受けとって抱いてくれるシンは、なんだかんだ言ってやっぱり優しい。
「ふわふわでしょ?」
シンの腕の中にいるうさぎを私も撫でる。
「あー、なんかお前の髪なでてる時みたい…」
「え?」
驚いて見上げると、楽しそうな笑み。 あ、なんか嫌な予感…。 それは残念ながら外れることはなく、シンはうさぎを地面に下ろすと、私に口づけた。 一瞬触れただけ。 だけどまさかこんなところでされる訳がないと高をくくっていた私を驚かせるには、十分すぎるものだった。
「シ…シン…!?」
ここには小さい子もいっぱいいて。 慌てて辺りを見回すが、私たちを見ている人がいないことにとりあえず安心する。
「どうせお前のことだから、動物園にでもくれば子供の目を気にして俺がキスしてこないとか考えたんだろうけど」
み、見抜かれていた…。
シンは笑う。 先程の楽しそうなものとは違い、私をドキッとさせる艶やかな笑みで。
「甘いんだよ」
お前の考えくらいお見通し
(私が彼に勝てる日はくるのだろうか……)
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