なんつーかさ、彼女の家で二人きりなんて状態になったら、そりゃ男の欲望の一つや二つ抱えてもおかしくないと思わないか?
普通、女ならその辺の危険察知能力とか持ってると思ってるのは俺だけか?

俺は自分の肩に寄り掛かる愛しい彼女の――珠紀の寝顔を見つめた。
無防備な寝顔。

こいつ、俺を安心しきってるのか、それとも眠る自分に俺が何かできる訳ないと舐めてんのか……。
できればまだ前者であることを願いたい。

それにしても何故俺が今こんな状態にあるかと言うと、説明は簡単。
珠紀が俺は落ち着いて黙っていることができないとか馬鹿にしたようなこと言ってきたので、十分間落ち着いて黙っていられたら珠紀からキスという条件のゲームをした。
それで、縁側に座ってぼーっと空を眺めていたら、直ぐに肩に重みが加わった。
視線を向けると、珠紀がすやすやと寝息をたてていた。
まぁ、珠紀が寝ていてくれたほうが俺が間違って喋りかけてしまう心配もないからそのままにしていたが、十分が過ぎ、二十分が過ぎ、三十分が過ぎて、今に至る。

「起きねぇなぁ……」

三十分ぶりに出た俺の声が虚しく消える。

「なぁ、珠紀……」

名前を呼んでも返ってくるのは寝息だけ。

「……ったく…」

そっと珠紀の柔らかな髪に触れる。
指通りのよい綺麗な髪。
飽きることなくその髪をすいていると、珠紀が身じろいだ。

「ん……、あれ……?」

瞼が震え、寝ぼけた珠紀の目が俺を捉える。

「わりぃ、起こしちまったか?」

頭を撫でてやると、幾度か瞬きをして、珠紀はバッと俺から離れた。

「ご、ごめんなさい、私寝ちゃって…!!」

「気にすんな。……だけど――」

俺、三十分も無言だったんだけど。
ニヤリと笑って告げると、約束を思い出した珠紀の顔がみるみる赤くなっていった。

「キス、してくれるんだろ?」

三十分無言だったしできれば三回して欲しいなぁ…、なんておどけながらも思ったままを素直に言う。
あー、言ってる俺までなんか恥ずかしくなってきたぜ…。
だけど、視線を逸らすことはせずに見つめれば、うーと恥ずかしそうに唸る珠紀。
無自覚なんだろうけど、そんな姿さえ俺の心を掻き乱すんだ。

「…目、つむってください……」

呟かれた言葉に俺はおとなしく従って目を閉じる。
まもなくして柔らかな感触を唇に感じる。
しかしそれはすぐに離れてしまう。
少し物足りなさを感じながらも目を開けるとともに再び唇に感じる温もり。

……こいつ、俺の言った三回を叶えてくれようとしてんのか…?

離れていく唇を見送っていると、ふいに珠紀と視線が絡む。

「真弘先輩……!目、閉じてって……!!」

羞恥からか距離をとろうとする珠紀の腰をすかさず抱き、逃げれないように固定する。

「珠紀、あと一回…」

珠紀の頬ははこれでもかってくらい赤く染まっているが、畜生、俺だって恥ずかしいんだよ……。
だけど、恥ずかしさより、珠紀と触れ合いたい気持ちのほうが大きいから。
自分から少し珠紀に顔を寄せる。

「好きだ、珠紀…」

「…わ、私だって…好きです…」

三度重なる唇。
しかし今度は唇が離れるより早く、俺は珠紀の頭を固定した。





please Kiss me my princess

(また今度、ゲームしような?)











――
友人凛紅からリクエストいただきました!
真弘先輩で、家でイチャイチャ
最初は祐一先輩か遼でリクくれてたんですが、ゲームプレイして真弘先輩にはまったそうです
シチュにたいして「アイデアあったら自分で使うし(笑)」とか一言余計なことをメールに付け足してきた彼女から、なんとか『家でイチャイチャ』というシチュを聞き出したあの下校中の電車内が懐かしいぜ…←
懐かしいとか思うほど待たせてごめんなさい……

リクエストありがとうございました!!








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