「誕生日おめでとうございます、真弘先輩!」

「おー、ありがとな」

先日、珠紀が俺の誕生日を祝いたいと言ってくれた。
大事な彼女が祝ってくれるのはそりゃもちろん嬉しくて、俺の誕生日に約束をした。
子どもかと自分にツッコミを入れたくなるほど当日が楽しみで、前日はあんまり寝つけなかったぐらいだなんて、あいつに言えねぇけど。

正直、自分がまた誕生日を迎えられるなんて思っていなかった。
だってそうだろ?
俺は生贄となって死ぬ運命だったはずなのだから。
死ぬ運命を受け入れざるをえなかったのだから。
近い未来で死ぬことを、知っていたのだから。
だが珠紀に出会い、一緒に戦い、いつしか共に生きたいと思うようになった。
望んではいけないと分かっていても気づいてしまった気持ちは日々大きくなって。
そして運命に従い、生きることを諦めた俺をあいつは救ってくれた。
その結果、俺はツヴァイと戦い、鬼斬丸を壊したことで、運命から、呪縛から、血から、解放された。
それも全て、珠紀に出会えたから。
あいつが、俺を求めてくれたから、今俺はここにいる。

そう思っていたら、無意識に体が動いていた。

「真弘先輩!?」

目の前にいる珠紀をそっと抱きしめる。おおざっぱな俺には似合わないと思うほど、壊れ物を扱うよりももっと優しく。
突然のことに慌てふためくあいつが愛しくて、可愛くて。

「少し、黙ってろ……」

耳元で囁き、抱きしめる腕を少しだけ強めた。





お前がいたから

俺は、これからも生きていく。





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