「真弘先輩、遅いなぁ……」

茜色に染まる放課後の教室。
珠紀は一人、職員室に呼び出された真弘を待っていた。

真弘が呼び出されたのは、テストの点数と進学の関係。
拓磨も先日同じ理由で呼ばれていた気がするが、彼の場合はすぐ終わったようだ。
真弘の場合は受験生と言うことで、随分と深刻なのだろう。

「もう…、だからちゃんと勉強しなきゃ駄目ですよって言ったのに……」

珠紀はため息をつくと、机に伏した。

しばらくして、教室の中に静かな寝息だけが聞こえた。





ばたばたと廊下を走る足音。
そしてドアの開く音がする。

「悪ぃ、珠紀!」

大好きな人の声。
混濁する意識の中、珠紀は真弘が来たことを感じとる。
しかし、瞼が重くて開かない。

真弘先輩に、文句の一つぐらい言わないと……。
そう思うのに、主の意識に反して瞼は開くことを拒否している。

「寝てる……のか?」

真弘が近づく気配がして、その手が珠紀の髪をそっと撫でた。
温かい――。

「待たせちまって悪かったな」

そして、真弘は珠紀の長い髪を一房手に取ると、その髪に口づけた。

「好きだ、……」

そう囁かれた一言に誘われるように、珠紀は重かった瞼をそっと持ち上げた。
真弘の瞳とばっちりと目が合う。

「おまっ…!!起きて……!?」

途端に真っ赤になる真弘に自然と笑みが漏れる。
珠紀は起き上がると、少し頬を朱に染めたまま、真っ直ぐに真弘を見つめた。

「私も好きです、真弘先輩」

「……それなら俺は愛してるよ」

ゆっくりと顔を近付ける真弘に、珠紀はそっと瞳を閉じた。





茜色の教室









――
邑様、キリ番のリクエストありがとうございます!

激甘とリクエストをいただいたのですが、これ激甘……か…?
私にはこれで精一杯でした……


これからも当サイトをよろしくお願いします!!






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