茜色した通学路。 雪の残る道を歩く私の隣には、大好きな人。 だけど、後ろに続く影法師は一つだけ。 それは私たちの距離がとても近い証。私たちの手がしっかりと繋がれている証。 たったそれだけのこなのにそれがとても嬉しくて、愛おしい。
「なんだ、後ろなんて見て」
振り返って影法師を眺めていた私に、彼は訝しげに尋ねた。
「ううん、何でもないよ、拓磨」
繋いだ手を少しだけ強く握る。 何度も私を守って戦ってくれた手。 ごつごつとしたこの温かい手が私はとても大好きだ。
「ったく…、おかしなやつだな」
そう言いながらも拓磨の口調はとてもやわらかく、視線は私と同じく影法師に向いていた。 もしかしたら私と同じことを考えてくれたのかもしれないなんて淡い期待を胸に抱く。
「ねぇ、拓磨。……大好きだよ」
視線を彼に移し、私は言葉を紡ぐ。
「な、なんだよ、いきなり…!」
拓磨はあわてふためき、徐々に顔が赤くなっていく。 そんな姿に私の頬は自然と笑みを浮かべた。
「ずっと、側にいてね」
「…当たり前だろ」
照れ隠しなのか、ぶっきらぼうな言い方。 あぁ、貴方が本当に愛おしい。
「…笑ってんな…」
「え…?……っ」
繋がった手を引かれ、私は拓磨の胸に導かれる。 そして顎を持ち上げられ、唇が重なる。 啄むように重ねたていたキスは、次第に深くなっていく。
鬼斬丸を封印するために死を選んだ時は、まさかこんな風に拓磨と過ごせる日が来るとは思っていなかった。 最後の逢瀬となるはずだったあの時、こんな風に何度も唇を合わせることができる時が来るなんて思っていなかった。 だからだろうか。私は今までだったら恥ずかしがるであろう、気持ちを伝えるということに今はたいした躊躇いもない。 拓磨も不器用ながら、こんな風に愛情表現をしてくれる。 あの戦いが私たちを大きく変えたのだ。 だけどそれは、悪いことじゃなかった。
「大好き……、愛してるよ、拓磨…」
唇が離れた時、私はもう一度愛の言葉を囁いた。
君に愛を伝えよう
(声や体や態度で君に)
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