二月十四日。
女の子にとって、大きな意味を持つ大切な日。
その一日を、私は大好きな卓さんと過ごすことになっていた。
今日は日曜日で学校は休みなので、他の守護者のみんなや友達には一昨日にチョコをプレゼントした。
でも、これから渡すチョコは義理チョコや友チョコとは違う。
とても意味の大きい、本命チョコだ。
早くもドキドキと高鳴る胸を抑えて、私は卓さんの家のインターホンを押した。
十数秒して戸が開き、大好きな人の微笑みが私をむかえてくれる。

「いらっしゃい、珠紀さん。どうぞ」

「こんにちは、卓さん。お邪魔します」

卓さんに導かれ、居間へとあがる。

「お茶をいれてきますから、少し待っていてくださいね」

「あ…、ありがとうございます」

部屋から出て行く卓さんを見送ったあと、鞄の中から作ってきたチョコを取り出して、自分の横に準備する。

「お待たせしました、珠紀さん。はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

出されたお茶を一口飲んでから、私はチョコレートを差し出した。

「…これ、受けとってもらえますか?」

「…えぇ、もちろん。貴女からのチョコレートを私が受け取らない訳がないでしょう?ありがとうございます」

嬉しそうに受けとってくれる卓さんに、私も嬉しくなる。

「今頂いても?」

「はい、もちろん」

卓さんはラッピングされた袋を開け、いくつも入った小さなハート型のチョコを一つ取り出し口の中に入れた。

「うん、美味しい」

「よかった……」

「貴女の思いが詰まっているから、私が今まで食べたどのチョコレートより、貴女がくれたこのチョコレートのほうが美味しいですよ」

ちゅっと髪に口づけられ、私の頬はあっというまに朱に染まった。

「嬉しい…です」

「可愛いですね、珠紀さん。……愛してますよ」

卓さんに抱きしめられたかと思うと、気付いたら唇が重なっていた。

二月十四日、バレンタインデー。
その日のキスは、甘い甘いチョコレートの味がした。





バレンタイン

(甘いのはチョコレート?それとも……)









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