END直後のお話です
ミニドラゴンになっちゃたラギを抱き抱えて、急いで食堂に走る。 女の子に抱き着かれるとミニドラゴンになる体質は治ったはずだったのに、私を抱きしめたラギはミニドラゴンに変身してしまった。 何で私だけ……、と驚きと寂しさ半面、先程ラギが言ってくれた『好き』と言う言葉が嬉しくて、思わずラギを抱える腕に力が入る。
「うおっ!?おい、ルル!!」
突然腕の中で暴れだすラギ。 もしかして苦しかった…!?と私は急いで腕を緩める。
「ごめんなさい、苦しかった……?」
「確かに苦しかった、苦しかったが……、それ以上に、お…、お前あんま力いれんなっっ!」
なんでだか、照れてるみたい。(ミニドラゴンじゃ、顔が赤いとかは分からないのだけど……)
「ラギが苦しい思いをしないように次は気をつけるわ…!」
「だから……、そういう意味じゃねぇぇぇっ!!」
ラギバタバタと腕の中で暴れる。
「もう…、言いたいことははっきり言ってくれなくちゃ分からないわ……!」
ラギが苦しくならない程度に再び腕に力を込める。
「だーかーらー、力入れんじゃねぇーーっ!!」
「きゃっ…!」
「うぉっ!?」
またも暴れだすラギに、私はついにラギを落としてしまった。
「ごめんなさい!大丈夫、ラギ……!?」
急いでラギを助け起こそうとするが、その前にラギは自分で立ち上がった。
「ラギ…!!」
「お前なぁー…」
ラギの声が少し低くなる――と言っても、ミニドラゴンなラギはもともと声が高めなので、あまり凄みがない。 しかし、怒らせてしまったのかと少しびくびくする。 ラギはキッと私を見上げて口を開く。
「お前なぁ!いい加減自分の性別考えろ!お前この姿の俺と普段の俺をぜってぇ同一視してねぇだろ!?お前が今の俺にやってたことを普段の俺に置き換えて考えてみろ!!お前は俺を…、その…、む、胸に抱き抱えてんだぞ!?」
誰とは言わないけど、魔法大好きな人が興奮した時並のマシンガントーク。 なんとかその内容を聞き取った私は、言われた通り先程の行為をミニドラゴンのラギではなく普段のラギに置き換えて考える。
…。 ……。 ………。
「きゃーーーっ!」
「うぉっ!?」
ぼんっと音がたちそうな程にいっきに顔が赤くなったのを感じた。 私の突然の発狂に、ラギが驚いて少し後ずさったのも気にしていられない。 私……、私……!! 考えただけで、また恥ずかしくなる。
「……おい、わかったか……?」
そっぽを向いて私に問い掛けるラギに、私はなんとか、うん…と返す。
「…あ…、怒鳴ったら余計腹減ってきた……」
「ラギ!?」
ふらふらしだしたラギを見て、私はハッとする。 今はラギに食事を与えなきゃ…! 私は急いでラギを抱き上げ、落とさないようしっかり抱きしめて走った。
「……お前全然、……分かってねぇじゃねぇかよーーーっ!!」
ラギの絶叫は、必死で走る私には耳に入ってこなかった。
苦労人な彼と、無防備な彼女
「あれ、ルルちゃん、…とラギくん…?あれ、ラギくん治ったんじゃなかったっけ…?」
「うるせぇっ!」
「あ、まさかルルちゃんにだけ反応しちゃうとか?……やっぱそんな男のロマンを叶えるポジションは惜しいもんね」
「…だから、うるせぇ!!」
「変わって欲しいな。俺もルルちゃんの胸に顔を――」
「うるせぇぇぇっっっ!!」
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