図書館の七階。ほんの僅かな魔法士しか入れない場所。 私とエストは今日もそこで新たな知識を求めていた。
「あ、エスト!エストが探してた魔導書ってこれじゃない?」
「あぁ、そこにありましたか。ありがとうございます」
私から魔導書を受け取ったエストは、その場でぺらぺらと数ページ書物をめくる。
「それにしても…、ここに転入したばかりのころは、まさかこんな上の階にまで来れるようになるなんて思わなかったわ」
私の呟きに、エストは魔導書から私へと視線を向け、意地悪く笑った。
「あの頃のあなたはトラブルという言葉を具現化したような人間でしたからね」
魔法薬の爆発や魔法の失敗など、エストは私の犯したトラブルを一つ一つあげていく。
「エストの意地悪…」
いじけたように呟けば、エストは悪びれずに、意地悪で何が悪いんですか?なんて飄々と返しきた。
「昔のエストはすごく可愛かったのに……」
ボソッと呟いた言葉だったが、どうやらエストの耳に入ってしまったらしい。 エストの表情はニコリと意地悪なものに変わる。 あぁ…、またやってしまった……。
「言いましたよね?僕は可愛いと言われるのが一番嫌いだ、と。例えそれが昔のことだとしてもね」
とん、と気が付くと本棚を背に追い込まれていた。 あれ、なんだかデジャヴを感じる……。
「エ、エスト……?」
戸惑う私を尻目に、エストはゆっくりと指を絡めてきて、私を拘束する。 その仕種はなんだかいやらしくて、恥ずかしくなってしまう。
「しかし…、『昔は』可愛いかった、と言うことは、今はどうなんですか?」
艶やかな声が耳元で響き、私の心臓は早鐘のようにドクドクと動いている。
「ねぇ、ルル?教えてくれませんか?」
甘い甘い声は、耳から身体中へと駆け巡る。 この声に私が敵うはずがなかった。
「……私が困っちゃうくらい、素敵な男の人だわ……」
私の答えに満足したのか、エストは唇を重ねてきた。 角度を変えて幾度も口づけを交わせば、息苦しくなってきて酸素を求めて微かに口を開く。 それを待っていたかのように即座に口づけは深くなる。 そうなってしまえば私はもうどうしようもできなくて。そもそも抗いたいとも思わなくて。
長い長い口づけが終わった時には、私の息は荒く乱れていた。
「……ですが、ルル」
片手が解放され、空いたエストの指が私の髪を一房搦め捕った。
「…あなたが時空を越えるなんてトラブルを犯してくれたお陰で、今の僕はいる」
目の前に広がるのは優しい笑み。 私だけに見せてくれる、私だけの表情。
「…大好きよ、エスト……」
だから、もう一度キスをして。 自由になった腕をエストの首へ回す。 瞳を伏せると同時に、待ち望んだ温もりが唇に触れた。
いくら時が過ぎようとも (ずっとずっと大好き)
―― 相互リンクしているハミからリクエスト頂きました
3年後の2人が昔の思い出話に花を咲かせる→ルルちゃんが『昔のエストはあんなに可愛かった』みたいなことを言う→エストが『じゃあ今の自分はどうなんだ?』と問う 的な感じで甘く、というリクを頂いたのですが、書き終えてみたら思い出話に花が咲いてない……! ルルちゃんいじけちゃったよ…… と思いもしたのですが、こんな感じで大丈夫だったでしょうか、ハミ…?
プレイ中、3年後エストにものすごく悶えさせられたので、この設定でリクが来た時は私のテンションが上がりました(笑)
リクエストありがとうございました!!
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