「エストエストエストーっっ!!」

慣れ親しんだ僕を呼ぶ声。
ぱたぱたとした足音は勢いを弱めることなく近付き、そして――

「エーストっ!!」

「うわっ!?」

僕におもいっきり飛びついた。
バランスを崩す僕の体。
あぁ、まただ…。
最近よく受ける痛みを覚悟する。

ゴチンッ

「くっ……」

草が生えているといえど頭と体をおもいっきり打ち付ければ痛いに決まっている。

「いい加減……、あなたは僕を殺す気ですか…!?」

腕の中にいる諸悪の根源に、もう幾度となく言ってきた言葉を改めて言う。
しかしそんな彼女――ルルはにこにこと僕を見上げていた。

「だって、エストを見ると嬉しくて飛びつきたくなっちゃうんだもんっ!」

ルルは嬉しそうに僕の体に強く抱き着く。

「エスト、だーい好き!」

腕の中で僕に愛を告げる彼女は、僕より年上だと思えない無邪気な笑顔を浮かべた。
そんな笑顔一つで許してあげたくなる僕はもう、末期としか言いようがない。

「ねぇねぇエスト!私今日エルバート先生に褒められたのよ!」

それはとても珍しいことで、ルルには申し訳ないが純粋に驚いた。
僕と同じ闇属性を手に入れたがまだ完全に安定していない彼女の魔法は、以前よりは少なくなったもののしかし失敗は多く、彼女の失敗談は何度も聞いている。

「『これもあなたの努力とエストくんの力添えのおかげですね』って!!」

「……僕は少し教えただけです。ですが、あなたの努力が報われてよかった」

正直な気持ちを口にすると、ルルは僕をギュッと抱きしめた。
それによって思いだす。僕ということが驚いて忘れてしまっていた。彼女は今、僕の上にいるということに。

「…ルル、いい加減離れてもらえませんか…?」

こんなとこを誰かに――特にアルバロなんかに見られたら何を言われることか……。
しかしルルは動こうとしない。

「ルル…!」

「もうちょっとだけ、もうちょっとだけ抱きしめさせて、エスト!」

「…っ!」

ルルが本当に幸せそうに笑うから、これ以上僕は何も言えない。

最終的には、僕も彼女の身体をそっと抱きしめ返した。





あたたかな温もり

(好きですよ――そんな気持ちを心の中で呟いて)










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