はじめてのこい

自分の部屋でゆっくりと寝転ぶ。

私の部屋は、黒と白のモノトーンで落ち着いており、ぬいぐるみや写真などの趣味なものは全く置いていない。

女っぽくないのだ、端的にいうと。

置いてあるものといえば、ジャスティスリーグの写真くらい。

服も全然持っておらず、ワイシャツとズボンを着まわしてる。

どのくらい男っぽいかというと……キッドフラッシュに男だと間違われたままチームに入ったくらいかな。

私自身は自分が男っぽいという自覚はなくて、自分の好きなまま生きて、人生を楽しんでるつもりだ。

でも、可愛くないよなぁ、とは思う。

メーガンみたいに可愛らしくもなりたいし、アルテミスのように女らしくなりたい。

まあ好きな人もできないし、まあこのままひとりで暮らすのも悪くないと思った。

パソコンに向かい合って、「かわいくなりたい」とか本音がでちゃってる、けど、まあいいや。



ブラックカナリーに呼び出されて、ホールに出た。
一体私が何をしたっていうんだ。と、すこし不満をためながら。

「ブラックカナリー、なにかしちゃいましたっけ」


私が思ったことをいうと、カナリーは眉を下げた。

「まあ、ここに座って話しましょう」

と、ソファのあるところまで歩いた。

そして唐突にこう繰り出した。

「貴方、最近悩み事があるんじゃない?」

「いや、別に……」

悩み事、というか自分の生き方に疑問を持っただけだし……と人に相談しにくい自分の悩みを抱える。

「そんなことないでしょう、だって最近身体のキレが悪いもの」

フフ、と目を細めて笑うカナリー。

「そうですか……はは、バレちゃうもんだなぁ」

脚を投げ出して手を後ろにつき重心をかけた。

「あなたはティーンなんだから、もっと自由に生きなきゃだめよ」

そんなカナリーの言葉が、思いやりに溢れていて、少し嬉しい気持ちになった。



ドアが空いて、ウォーリーとロビンが入ってきた。

「あ、お邪魔でした?」

ウォーリーがいつもの笑顔でそう言った。

「いや、大丈夫よ。それじゃ、行くわね」

じゃあね、エルヴィ。と手を振ると、颯爽と去っていった。ほんとに素敵な人だな。

「何話してたの?」

ロビンがニコッと笑って私に話しかける。

「いや、ちょっとね」

ロビンとウォーリーに話すほど大した話じゃない、っていうか恥ずかしすぎる。

「なんだよーもうちょい可愛くしてみてもいいんじゃねーの?」

ウォーリーが私の気にしてるところに触れた。

「そんな可愛げなかったらモテないぞ?」

その一言が私の逆鱗に触れた。
ぷっつん、なんて音も聴こえそうなくらいに頭に血が上って。

「私に何を望んでるの」

怒りを含んだ声色で呟き、ウォーリーを睨みつけた。

そして息を吸い込むと、声を上げて言った。

「私はメーガンやアルテミスみたいに強くて可愛いヒーローじゃないの」

違う違う、ちょっと待って、と考えつつ、歯止めの効かなくなった言葉を紡ぐ。

「あの子達とは、違うもの」

ここまで言って、ようやく火が消えて、残ったのはむなしい気持ちだけ。

ウォーリーは、やっちまったっていう顔してるし、ロビンはなんてこと言ったんだよって顔でウォーリーを見てる。

ごめん、でもほんとのことだから。
こういう所が女々しいんだ私。男っぽいならこういうところまで男らしくなれれば良かったのに。

「自分だってわかってる、私が可愛げの一つも無いことくらい」

ふぅ、とため息をついて、自分の部屋まで早歩きで戻った。



自分の部屋まで戻ると、膝から崩れ落ちて「あーあ」と嘆いた。

やっちゃったやっちゃった、もうだめだ、このキャラクターでやっていくにしても女らしくなるにしても気まずすぎる。
ああ、今日は早めにお風呂入って寝よう。

そう思い立ち、着替えとタオルを用意していると。

「おいっエルヴィ入るぞ」

誰だよ!と思いつつ声の主を探る。
ロビンしかいないな、と気づいたらもう入られてた。

「勝手に入って来ないでよ……」

着替えをとりあえず棚の上に置き、ロビンの前に立つ。

「あ、あの……」

バツが悪そうに頭をかくロビン。

「私、別に気にしてないよ」

くるっと後ろを向いて椅子に座る。

「逆に、ウォーリーに申し訳ないな」

そして下を向いて自分の行動を省みる。
ああ酷いことしちゃったなぁ。

「私が可愛くなくて男っぽいことも全部事実だもんね」

下を向いたまま意味もなくほっぺをつねった。
そうしないと自分を保てなくなりそうで。

そうしていると、ロビンが話し出した。

「僕は、エルヴィは可愛らしいと思うよ」

そういって、私の顔をつかんで上げさせた。

「君がミッションで良い攻撃仕掛けた時の笑顔、僕は可愛らしくて好きだ」

「へ」

ロビンは私の額にそっとキスを落とすと、
「じゃ、僕はウォーリーの所に行ってくるよ」
といい、ドアから出ていった。

「うん、ばいばい……」

額を抑えて手を振る。彼が出ていくと、自分の顔の熱さに気づく。

やだ、私、恋しちゃったみたい。

明日は、メーガンとアルテミスに、可愛さの秘訣聞いてみよう。

そうだわエルヴィ、とメーガンの真似をしながら、着替えを持ってお風呂場へと向かった。

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