Can't live without you/徐庶 1/2


 彼女に近付く”モノ”は、全て消えればいい──

「あ、あの……!」

 不意に後ろから声を掛けられる。声の主はなまえの友達だった。本当は無視したい所だったが、試したいことがあった。丁度いい。

「俺に何か用かい?」

 努めて笑顔で対応する。

「あの、いえ、その……。なまえは元気ですか……?最近姿を見かけないので、あなたなら知っているかと思って……」

 やっぱり、か。そう言ってくるだろうと思っていた。だが、そちらの方が好都合だった。

「ああ、元気にしているよ。でも……」
「でも……なんですか?」
「それがね、友達がうるさくて関わりたくないと言っていたんだ」
「えっ……」
「君は……一体誰のことだと思う?」

 みるみる内に友達“だった”女の顔から血の気が引いていく。

「あ、の……私……」
「うるさい友達……この意味……分かるだろう?」
「し、失礼します……!」

 この場の空気に耐え切れなくなったのか、走って行ってしまった。それにしても──。

「ふっ……あはは……!」

 こうもあっさり上手くいくとは、つい笑ってしまう。簡単になまえの周りの人間を消せる、実に良いことだ。

「さて、“掃除”でもしようか。……なまえに近付く“モノ”は、全て消えればいい」

 二人の世界に他の“モノ”なんて必要ない。

 それから数週間後、なまえは外に出なくなった。少し前まではあまり出歩かないで欲しいと言っても、聞いてはもらえなかったのに。

「最近外に出なくなったね、俺としては嬉しいんだけど、元気がないのは心配だよ……。何かあったのかい?」
「……みんな、私を遠ざける……。理由を訊いても何も言ってくれない、怒られることもあって……。私は何もしてないはずなのに……どうして……」

 やはり上手くいったみたいだ、笑ってしまいそうなのを必死に抑え、震えて泣いているなまえに優しく言葉をかける。

「そうか……みんな酷いな……。君はこんなに素敵なのに……」

 素敵だからこそ、彼女が穢れないように、周りの人間を“掃除”した。
 だがそれは想像以上に効果があったらしい。なまえは怯えきっていた。

「でも、大丈夫だよ。俺はなまえの傍に居るよ、ずっと……」

「……本当に……?」

「ああ、約束するよ。ほら、おいで」

 俺の傍に、俺と同じ所に、堕ちておいで。


 彼女が外に出なくなって、どれ位の時が過ぎただろうか。彼女は今でも外に出たがらない。
 ちょっとした悪戯心で「少し外に出てみるかい?」と訊くと、小刻みに震えながら「あなたさえ居ればそれでいい」と拒否する。
 俺が彼女の部屋に行くと、なまえはまるで光が灯ったように嬉しそうな顔をする。逆に俺が帰ろうとすると、不安げに縋りついてくる。

「あぁ、本当に……愛しいよ……」

 君はもう、俺なしでは生きていけないのだから。


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