(68話+)
「みなさん!私、仕事見つかりました!」
帰宅してすぐにガレージへ向かい、Dホイールの調整をしている遊星さん達のもとへ走った。
ドアを蹴破る勢いで開き、開口一番にその報告。
遊星さん達は一斉にこちらを見て、喜びを顔に出した。
「良かったじゃないか。やっていけそうか?」
「はい!」
「んで?どこにしたんだ?」
「治安維持局です」
「は!?」
「……突然だな」
みんなの反応も無理はない。
数日前にポッポタイム前で気絶していた女が、どういう訳か治安維持局で働く事になったのだから。
驚愕、そして疑い。そんな眼差しが3人……というか主にジャックから注がれているが、気づかないふりをした。
「私ってセキュリティのデータベースにいないんです。だから監視も含めてって雑用をする事になりました」
「ならばセキュリティの人間がコイツを引き取れば良いものを」
両腕を胸の前で組み、壁に寄りかかって私を見るジャック。顔立ちや目つきがキリッとしているから、睨んでいるようにも見えた。
ジャックにあまり良く思われていないのは知っているけれど、ちょっとキツいよね。
「まあそう言うなよ。ここにいればゾラの婆さんも助かるだろうし」
「本当は治安維持局で身柄を預かるみたいな話が出ていたんですけど、ゾラさんがそれは困ると」
「ほらな。ヒユラが遊星並みに婆さんに好かれてんのは分かってるだろ?」
「む……」
ゾラさんに渋られたのは本当だ。
数十分前、ガレージに来る前に私は治安維持局職員と共に帰宅し、ゾラさんと今後について話していたのだ。
ほんの数日だったが、家事やらの手伝いをした私をゾラさんは大層気に入ってくれた。遊星さん程ではないが世話もやいてくれる。
疲れもなかなかとれないこの歳、少しでも手伝ってくれるヒユラちゃんがいないと困ると言われ、私は四六時中治安維持局にいるという苦痛の時間を逃れる事が出来たのだ。
「まあ兎も角、おめでとうヒユラ。仕事はきっと大変だろうが、頑張ってくれ」
「はい!皆さんへの恩返しとして、懸命に働きます!」
治安維持局に顔を出すのは週に五回。巡回の為のDホイールの洗車や、長官の書類処理をするようだ。
残りの時間は好きに使えと言われているが、やることなんて特にないし、亜空間で三人とお喋りしたりするかな。
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「ほう。ヒユラはこんなにも口から出任せが吐けるのか」
「つってもあの家の婆さんに渋られたのは事実だろ?あいつ、家事だけは得意だもんな!」
「そのお陰で事が上手く運ばれた。これからは頻繁に、ヒユラもここへ来るだろう」
「やったあ!いーっぱいこき使ってやろ!」
2016.12.01
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