(146話〜???話)
太陽ギアに向かう通路に響くエンジン音。
来たね、皆さん。待ってましたよ。
遊星さん達、チーム5D'sの皆さんがようやく到着。その中にはシェリーさんもいた。
デュエルディスクについたスイッチを押すと、アーククレイドル内のギミックが動いて彼らの前に広い空間を作り上げた。
突然の変化に驚き、急ブレーキをかけて停まる遊星さん達。
彼らの前に降り立つと、私に向く驚愕の眼差し。
遊星さんがヘルメットを脱ぎ、まっすぐに私を見据える。
「ここまでお疲れさまでした。次は私がお相手します」
「ヒユラ……」
「そこを退け!貴様の相手をしている暇など無い!」
「ならば、相手をせざるを得ない状況になれば良いんですね」
私は再びデュエルディスクのスイッチを押す。
すると次は床に仕込まれていたギミックが起動して、遊星さんを除いた全員の足首に機械の輪を装着させた。
慌てふためく双子ちゃん。きっと先のアポリアとのデュエルを思い出しているのだろう。
でも安心してほしい。デュエルするのはあなた達じゃない。
私の相手はただひとり……。
「デュエルです、遊星さん」
「どうあっても俺達を通さないつもりか」
「はい。時間稼ぎですよ。ゾーンのもとに行くまでに少しでもアーククレイドルを低く!……ってね」
私が耐えれば耐えるだけ、ゾーンに希望を託す事ができる。
ああ、本当はどうでもいいんだよ。ここに私の意思はない。
ただ恩人の為に、ゾーンの為に!私はここで足留めをしなくちゃならない!
「遊星さん……いや、不動遊星!私はどんな手を使ってでもお前に勝つ!」
「望むところだ、かかってこい!」
「フィールド魔法、“スピードワールド・ネオ―アブソリューション―”発動!」
デュエルディスクを展開し、ゾーンから貰ったフィールド魔法をセット。
空間が歪み、私達を特殊なフィールドに誘う。
空を覆う異様な色の雲。歪みは全てを形成し、私達は戦場へと変わる世界に足をつける。
「ここは……ハイウェイか」
「このフィールドでは、スピードスペルは使えない!」
「なんだって?」
「そしてスピードカウンターも増えない。でもひとつだけあなたに有利な点がある」
遊星さんの隣に現れる彼のDホイール。
私の足を覆う光が弾けて消えた時、そこにはDシューズが装着されていた。
「ここでは擬似的なライディングデュエルが可能。つまり、あなたはアクセルシンクロが出来る。まあ、シューティング・スター・ドラゴンが出る前に倒しますけど」
指を鳴らせば、ハイウェイの空に浮かび上がる檻。その中に現れるのは、先程私が機械の輪をつけた面々。
遊星さんが彼らに声をかけるが、彼らに声は届かない。同じ様に彼らの声も遊星さんには届かない。
彼らはただデュエルを傍観する事しかできない。観戦はお静かに、ってね。
「このデュエルレーンに終わりはない。どちらかが勝つまでこの空間を出ることは出来ない!」
「……そうか」
「さあデュエルです。私はあなたに勝つ!」
Dシューズの出力を最大にまで上げ、私は果てまで伸びるレーンを駆ける。
遊星さんがすぐにDホイールに跨がり、私のすぐ後ろまで近付いてきた。
「ライディングデュエル……アクセラレーション!!」
現在の遊星さんのデッキには通常の魔法は無いはずだ。ずっとライディングデュエルをしてきたのだから。
さっきのアンチノミー戦でも、遊星さんが使用していたのはスピードスペル。
遊星さんは持っているスピードスペルを使えない。更にこのフィールド魔法ではスピードカウンターは貯まらない。
対して私は、スピードスペルではない魔法カードをデッキに入れている。そもそもスピードスペルは持ってないしね。
状況は圧倒的に有利。
「私はあなたを超える!先攻は貰います!」
最初に手札を5枚引く。そしてターン宣言。1枚をドロー。
何度も何度もシミュレーションでやってきたんだ。
練習では連敗を重ねてきたが、本番はそうはいかない。
「私はモンスターを裏守備表示でセットし、カードを2枚伏せる。そして手札より永続魔法《幻獣機再利用技術(マシン・ビースト・リサイクル)》を発動!」
力を貸して、幻獣機達よ。
2017.01.14
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