壊しちゃった(79話)
「……ちょっと。なんなのコレ」
「わ、ワザとじゃない……」
「わざとだったらどうなるか、なんて馬鹿なお前にもさすがに分かるか」
差し出したものの重要性は理解している。
ゾーンがくれた便利なアイテム。私が三人に会うために必要な道具。
私が長官の机に置いたもの。それは、空間転移装置……だったものだ。
床に正座する私。そして目の前には机に頬杖をついた激おこのルチアーノ。
プラシドは壁に寄りかかり、「無様だな」とクツクツ笑っている。
いつもならホセが助け舟を出してくれるのだが、残念ながら今日は留守。本当に残念。
「これどーすんの。なかったらお前、あっちに行けないじゃん。修理は時間かかるよ」
「そっか」
「いや、“そっか”じゃなくてさ」
「ごめんなさい……」
「別に良いだろう。コイツが来れないからどうこうと騒ぐ必要は無い。居ても居なくても同じようなものだしな」
「強がるなよ。一番寂しがるのはアンタだろ?」
「なに?」
「ストップ!論点ずれてるずれてる。今はルチアーノによる私の説教フェイズ……」
「黙っていろヒユラ。ルチアーノ……常々思っていたが、貴様まさか俺を見下しているのか?」
「だからなに?出来もしない事をやるなんて豪語しちゃってさあ……だぁーい失敗が目に見えてんのに、滑稽で笑っちゃうよ!」
「……しろ……」
「はあ?」
「俺とデュエルしろルチアーノ!!不動遊星を潰す前に貴様を潰し、力の差を見せてやる!」
「ヒャハハハ!やってみなよ!」
「や、あの……二人とも?」
「行くよヒユラ!亜空間に今から即興でデュエルレーン作るから。プラシド、本気で叩き潰してやるからな」
「その言葉、そっくりそのまま貴様に返すぞ」
「……まあいっか」
予期せぬケンカで説教を免れた。
ラッキーなのかそうでないのか……まあ久し振りに二人のデュエルを見れるのは確実にラッキーだ。
勝負の行方にワクワクしながら、私は二人の後をついて行った。
2017.01.02
戻る