×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
(80話)

狭霧さんと牛尾先輩に呼ばれたようで、遊星さんとクロウ、ジャックが出かけた。
ディナーに招待されるなんて、羨ましいなあ。行き先は高級レストランらしいし、はあー……プレミアイベントの時の豪華な食事を思い出す。

一通り仕事を終えてやることがなくなった私は、久し振りに自分のデッキに触れてみる事にした。
椅子に腰を下ろし、モンスターを並べていく。
それにしても不思議だ。幻獣機カテゴリーはまだこの世に存在していない。このカード群はいつのものなのだろう。
目が覚めた時には既に手元にあった。
……私は、どこから来たのだろう。


「……ん?このエンジン音は、」


聞き覚えがあるエンジン音だ。複数聞こえないって事に疑問を抱いたが、まあいい。
カードをデッキにしまって椅子を立つ。
シャッターを開けてお出迎えをしようとした時、こちらになにか巨大なものが投げられる。
人だ。思わず避けると、青い髪の青年が「いてて……」と呟いた。


「お、おかえりジャック」

「ああ」


Dホイールを定位置に停めると、ジャックが大股で青年に近づいていく。
青年は尻餅をついたまま振り向いて、あわあわと手を振った。


「や、やめて下さい!暴力反対!」

「なんかよくわかんないけど……ジャック!殴るのは良くないですよ!」

「もう一発殴った!二発目も同じようなものだろう!」

「ええ!?」

「そこを退けヒユラ!」


暴力でセキュリティ沙汰になるのは勘弁だ。
私は青年を守るようにジャックの前へ出る。
じりじりとにじりよってくるジャックに少しビビりながら青年の盾になっていると、遊星さんとクロウが帰ってきた。
すぐにDホイールを停めて、ジャックを宥めるクロウ。遊星さんはDホイールに寄りかかって此方を見ているだけだった。助けてよ!


「待てよジャック!」

「さあ吐け!俺のホイール・オブ・フォーチュンに何をした!」

「……どういう事だ、ジャック」

「ホイール・オブ・フォーチュンのパワーが上がっていた。これは貴様がやったのだろう!」


一体出先で何があったんだ。みんな高級レストランでディナーしてたんじゃないの?
なんでDホイールのパワーが上がってるんだ。まるで意味がわからん。

ジャックが私の後ろにいる青年を睨むと、彼はまるで許しを乞うように指を胸の前で組んでジャックを見上げる。


「ごめんなさい!そのDホイールのコンピューターのデータをちょっと調整しただけなんだ……」

「んな馬鹿な!遊星がオレ達のDホイールのパワーを上げるのにあんだけ手こずってるってのに!……こいつが短時間でそれをやったって言うのか?」

「そうとしか考えられん」

「へぇー……それ凄いですね……遊星さんより凄いメカニックが居るなんて驚きです……」


何日も寝る時間を削ってDホイールのエンジン開発やパワーアップをしている遊星さんの技術を上回る技術……私はメカに詳しくないから深く口出しできないけど……。


「どうやったのか教えてくれないか」


遊星さんが近づき、青年の肩に手を置く。
その表情は楽しそうで、言うなればワクワク、だろうか。尊敬や好奇心が読み取れる。

年相応の表情をする遊星さんは、とても新鮮でどこか可愛らしかった。


2017.01.02

戻る