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(76話)

巷ではDホイール窃盗団についての話題が広がっている。
WRGP開催が決まってから、闇市でのDホイール需要が増え、裏取引が増えているとか。
イェーガー副長官さんは窃盗団の情報に懸賞金をかけ、国民にどんな小さな事でも良い、情報提供を頼むと頭を下げていたっけ。
Dホイールを持っていない私にはあまり関係のない話である。

ガレージでジャックのDホイールを磨きながらぼんやり考えるのだ。
乗ったらどんな景色が見えるのかなと。
風の中で進化するライディングデュエル。それを知った時、自分の中でなにが変わるのかなと。


「……ふう、完璧」


一汗かいたな。
磨きあがった美しいホワイトのDホイールを見て溜め息が出てしまう。
名をホイール・オブ・フォーチュン。美しい曲線と異彩を放つフォルム。
詳しいことは知らないけど、これって確か本当は遊星さんのものなんだよね。
こんな唯一無二のDホイールを乗りこなして様になるジャックはすごいや。

さて、次は遊星さんの……。


「ヒユラ!俺のヘルメットを持って来い!」

「は、はひぃ!」


突然の怒鳴り声に思わず声が裏返る。ジャックが帰宅した。
あれ?ジャックは窃盗団に喧嘩を売って返り討ちにあって、入院してるんじゃ……。

ジャックは大股で此方に来ると、ピカピカになったDホイールを見て目を見開いた。


「磨いたのはお前か」

「はい。勝手ながら、」

「ふん。手際は悪くないな」


テーブルに置かれたヘルメットを掴み、ジャックに渡す。
ヘルメットが必要ってことは、Dホイールを走らせるって事だよね。
シャッターを上げると、ヘルメットを被ったジャックに「気が利くじゃないか」と褒められた。
Dホイールに跨がり、エンジンをふかして出て行く後ろ姿を「行ってらっしゃーい!」と見送った。

……さて、遊星さんのDホイールを磨いてしまおう。まだクロウのDホイールも、アキさんのDホイールも残ってるし。

ジャックが窃盗団を捕まえてセキュリティに引き渡したと知るのはそれから数時間後の事である。


2016.12.26

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