(75話)
「えっと……初めまして。ヒユラです」
「十六夜アキよ。よろしくね」
噂には聞いていた十六夜アキさん。
先日のプレミアイベントでモニター越しに活躍を見ていたから、私にとっては初めてという感情は浮かばないが、一応挨拶として。
彼女は彼女で遊星さんやクロウ、ジャックから私の事を聞いていたのだろう。
案外すんなりと受け入れてくれて、お互い悪い印象もなく顔合わせを終える。
「じゃあ私、着替えてくるわね」
「ああ」
どうやらアキさん、ライティングデュエルをしたいらしい。
遊星さんの最近の徹夜理由は彼女がライティングデュエルをする為の練習用Dホイールの制作。
にしても遊星さんの技術力には本当に驚かされる。集めたジャンクパーツでDホイールの原型が出来てしまうのだから、私はリサイクルの神だと遊星さんにカミングアウトされても“だろうな”と納得してしまうだろう。
アキさんが鞄を抱えなおしてガレージを出て行く。
着替える場所は私が使わせて貰っている部屋を指定。数分でライティングスーツを纏った彼女が降りてくるだろう。
「最終調整だ。ヒユラ、そこの工具箱をとってくれ」
「了解です!」
今日はお休みだし、一日中楽しく過ごせるぞ。いや、プラシド達といるのが楽しくないという訳ではないけど。
遊星さんの隣で、工具を渡しながら調整する事約十分。扉の開く音がして、顔を上げる。
「おお、決まってんな」
「馬子にも衣装か」
「ジャック、それは失礼ですよ。とっても素敵ですアキさん!」
「ありがとう。なんだか自分じゃないみたい……」
赤と黒のライティングスーツは、スタイル抜群の彼女の身体にぴったりと合っていた。
ああ……胸大きいな。出てるとこは出て、引っ込んでるとこは引っ込んでる。
恥ずかしそうに視線を泳がせるアキさんがこちらに降りてくると、調整を終えた遊星さんが顔を上げてアキさんを見詰めた。
「うん、似合ってるじゃないか」
遊星さんに似合ってると言われ、アキさんは嬉しそうに笑う。
彼女はこれからDホイールを運転する為のライセンス取得を目指す。
私には応募しか出来ないけど、するからには全力で応募するよ。
2016.12.25
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