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滝澤政道(:re)
※「これ」と同じ夢主
※本編後
※ivk実装おめでとう



長い戦いが終わり、各々が新たな目標を胸に生きる世界。師であり私の帰る場所であるエトちゃんがあの戦いで命を落とし、もう何年経っただろうか。
人間と喰種が手を取り合って強大な敵に立ち向かったあの日。あらゆる人も喰種も死んだあの日。
そして、追い詰められた私を滝澤さんが助けてくれた日。行方が分からないままで、二度と会うことはできないと思っていた。だからこそ助けてくれたことよりも、会えたことが嬉しくて泣いてしまった。
彼はあの大きな戦いの後すぐに街を出てしまい、私も慌てて追いかけた。エトちゃんが死に、アオギリも事実上壊滅。帰る場所もない、行くあてもない。そんな私に残された選択肢は、滝澤さんについていくことだけだった。

喰種になる前は、こんなに殺伐としてなかったのに。
彼の休みの日に合わせてデートして、私は人間の食事を笑顔で飲み込んで、帰ったら吐いて。エトちゃんにそれを見られて笑われた。

「……なぁ」

今日も何人も殺した。彼は喰種の存在を許してない。あの日でカネキケンの戦いは終わったかもしれないが、滝澤さんの戦いは終わらない。人間を襲い続ける喰種を狙って全国を飛び回っている。
月が傾き、雲が光を遮った。ビルの縁に腰掛けて町並みを見下ろす彼の背中の、なんと小さいこと。

「どうかしましたか」

歩み寄り、私もその隣に腰を下ろす。フードと髪で彼の顔は見えないが、浮かない顔をしているのはわかった。
そよ風に乗って血の匂いが流れてくる。エトちゃんといた頃は毎日欲しくて堪らなかったものが、今ではどうだ。食事で摂取する量より、殺して浴びる量の方が多いのだから笑ってしまう。

「まだ俺のこと好きなんだよな」

「当然ですよ」

滝澤さんは時々、こうして問いかける。きっと不安なのだ。彼は喰種になり、性格も見た目も変わってしまった。
優しくてちょっと抜けてて真面目で正義感の強い彼は、殺しを愉しむ残虐で非道なひとになった。今では殺しを愉しむことはしないけど、空腹と狂気で満たされていた当初は、なんていうかすごく、恐かった。

「殺しかけたのに」

「あの頃は仕方ないです」

「食ったし」

「空腹の苦しみは私もわかってますから」

「……突き放した」

「私もあなたの前から姿を消しましたよ」

数年前のCCGによるあんていく襲撃、及びアオギリによるCCG襲撃の日、私はエトちゃんに逃げるよう言われて街を離れることにした。街を出る前に滝澤さんへ挨拶し、泣きながら喰種だと明かし、しっかりと好意を伝えて姿を消した。
それからまた月日が経ち、エトちゃんに会いたくなった私が街へ戻ってきた時に、半喰種となった滝澤さんと出会った。
あの時は本当に、どうすればいいかわからなくて言葉がなにも浮かばなかったっけ。カノウというエトちゃんの協力者の人間に怒りをぶつけたくても、彼はタタラさんとエトちゃんの盾があって手を出せない。恨むべきは誰なのかって頭を抱えたけど、答えは結局でなかった。

「私、滝澤さんとならどこにでも行けます!ついて行きます!だから、不安になることなんてないんですよ」

彼の顔を覗き込むように身を乗り出せば、彼が少しだけ口角を上げて笑みをつくる。
滝澤さんは私の襟を掴んで雑に引き寄せ、強く抱きしめた。無意識なのか、肩から少しだけ飛び出した赫子を見て、私は己の鱗赫を伸ばして彼の羽赫に絡めた。
私は不出来な喰種で、彼のような最高傑作とは違う。鱗赫は本数こそ八本と多いけど、細くて刺すことにしか使えない。本来は羽赫か甲赫になるのだが、それらの間にできてしまった赫胞のせいで、羽赫のような消耗量と、甲赫以下の硬度の不完全な赫子が出る(勝手に羽甲赫と呼んでいる)。
赫者でもなく、レートもS止まり。強くはあったが、囲まれると頭が混乱して対処が遅れる。
彼の……オークション襲撃のように、単独で突っ込んで全て対処するなんてできない。
私の方が長く喰種として生きてきたのに。同じ半喰種なのに。私はエトちゃんの右腕にもなれずに、ああ。

「俺もお前だけでいい。だから俺より先に死ぬなよ」

滝澤さんの言葉の後に感じた気配。一瞬でわかるほどの殺気だ。きっと隠れるつもりはないのだろう。
羽甲赫を展開し、こちらに向かっていた羽赫の刃を防いだ。滝澤さんが忌々しそうに視線だけ動かし、「空気の読めねェ奴だな」と吐き捨てた。

「最近多いね、襲われるの」

「名前が売れてる証拠だ。さっさと片付けて……そうだなァ……次はもっと南に行くか」

「はい」

私から手を離した彼が、腰掛けていたビルの縁を蹴って飛び出す。私は鱗赫を壁に突き刺して落ちるのを回避し、彼の後を追った。
半喰種の命は、人間よりも喰種よりも短い。体にガタがくるとすぐにもう長くないとわかるだろう。
その時がくるまで私は、彼と一緒に歩き続けたい。
この世界がもっと人間と喰種の仲を良くしけるように、私たちはヒトに仇を成す喰種を狩り続ける。