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藤木遊作
※ラブエレ

▼あなた色に染まる

学校を終え、すぐに草薙さんの待つキッチンカーへ帰宅。俺のただいまの一言に、草薙さんからのおかえりの返事。普段と変わらない光景だったが、ひとつだけ足りないものがあった。

「……名前は?」

名前の姿がない。いや、この時間ならサーバー内での見回りをしていてもおかしくはない。
だがなんというか、少し気になったのだ。嫌な予感とも捉えることができる。
俺の問いに草薙さんが苦笑いを浮かべ、俺の手元にあるデュエルディスクから顔を出したアイがニヤける。すぐにアイがなにかをしたと察しがつき、俺はモニター前にデュエルディスクを置いてアイを問い詰めた。

「なにをした」

『別に変なことはしてないぜ?ただちょ〜っとだけイタズラしただけ!』

「悪戯?」

『そうそう!ホラ出てこいよ名前!別に可笑しくはねぇって!』

デュエルディスクから飛び出したアイがモニターをコンコン叩く。すると名前の手がにゅっと現れ、握った手の親指だけを立てて、それを逆さまにした。間違いなくアイに向けてのジェスチャーだ。

『ああ!?お前それはやっちゃいけないやつだろ!』

『じゃあ中指立てる!?』

『それはもっとダメなやつ!』

スピーカーからは怒りとも悲しみともとれる声が聞こえてくる。
ここまでくるとアイが名前になにをしたのか気になって仕方ない。ギャンギャン騒ぐアイの口を塞ぎ、静かになったスピーカーに向けて「名前」と声をかけた。

「隠れていても解決しない。出てきて見せてくれ」

『恥ずかしいから嫌だ!』

「名前、出てこい」

『うっ……わかったよ……笑わないでよ?』

「笑う訳がない。俺はいつもお前に対しては真剣だ」

徐々に画面の端から現れる姿。装飾の施された袖……待て、カラーリングがいつもと違う。名前のアバター衣装は深い青がベースの筈だ。そしてそれに映える鮮やかな赤紫色のパーツが付いている。それなのに深緑と黄色……どういうことだ?
その疑問は名前が完全に画面に現れた時に解決した。

『……す、すごく、恥ずかしい』

名前の全ての色が変わっていたのだ。髪の色も瞳の色も、それこそアバター衣装も。
髪の全体が深い紺色に染まり、前髪にはピンクとブルーのメッシュ。薄い色をしていた瞳も、はっきりと見える緑色へと変わっている。
これは、なんというか。

『すげーだろ!?名前のベースを遊作色に書き換えたんだぜ!アバター衣装のカラーリングはプレイメーカー様のスーツと同じやつにした!』

『ほんと何してくれてんの!?はやく戻してよ!』

『半日で効果切れるからそれまで我慢しろって』

『やだー!このままサーバーに入れないから見回りが出来ない!!』

腹を抱えて笑い転げるアイと、顔を真っ赤にして抗議する名前。そんな姿を微笑ましく見つめる草薙さん。
俺はどういう反応をすればいいのかわからなかった。だが三つだけ言える。
一つ、毎日見ているから今の色に違和感がある。
二つ、衣装のカラーをプレイメーカーにするならば髪の色もそうするべきだ。
そして三つ。俺の色に変えられて恥ずかしがる名前は見ていて悪くはない。