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- ナノ -


ゲリュガンシュプ
※ネクロマンサー夢主
※仲良くなるきっかけみたいなものにしようとした

▼念力すごい

「なぁ名前、そこに居るならちょっとお茶持ってきてくんね?」

「はーい!ただいま持って行きまッ」

『危ない!』

「わあ!?」

『液体を持って走るなとあれほど……! オマエは学習というものをしないのか!?』

「ごめんなさい……先生がお困りでしたのでつい……」

「いや困ってるとかじゃねぇけど。ただ喉乾いたなって」

「すごいですねゲリュさん!私、ふわーって浮いてます!」

『浮かせているからな』

「空を飛ぶってこういう感覚なんでしょうか……!」

『似たようなものだ。ほら、床に降ろすぞ』

「はい」

『全く……次は飲み物を手に走るんじゃないぞ』

「はい!」

「(なんか親子みてえなやりとりしてるな)」


▼念力べんり

「ほっとけーきを、ヘラを使わずフライパンのてくにっくだけでひっくり返します」

『ほう』

「いきますよ……それっ!」

『……』

「わああああ飛びすぎちゃった!」

『ふんっ!』

「げ、ゲリュさん!助かりました!さあさ、ほっとけーきをこちらのフライパンに……あいた!」

『こんな熱いものを飛ばすとは何事だ!ボロス様に当たったらどうする!』

「ボロスさんは避けるでしょうからあたりませんよ」

『そういう問題ではない!反省の意思がないなら仕置きだ!こうして頬を両方から引っ張ってやる!』

「いだだだだだた」

『ゲリュガンシュプ、その辺にしておけ』

『ハッ、申し訳ありません。ついカッとなってしまいました』

『名前、それはもう食えるのか』

「はい!あと5枚は焼きますよ!もうすぐでサイタマ先生とジェノスさんが帰ってくると思いますし」

『……』

「あ、それはボロスさんの分ですから食べてもいいですよ」

『そうか。ならば贄を貰いたいのだが』

「はい今すぐ!」

『ボロス様はこの小娘に甘すぎる……』


▼念力ありがとう

不思議と不安になる日がたまにある。先生がいびきをかいて寝ているのを横目に、ゆっくり起き上がる。彼を起こしてしまわないようにそっと布団を抜け出し、外套を羽織って家を出る。夜の散歩は気分転換にちょうどいい。

ここはZ市の危険区域。文字通り危険な場所だ。荒れた土地、壊れた家やモノがたくさんある。サイタマ先生が戦った時のものだろうなってわかる場所も少なくない。
危険すぎて人がいないこの区域は本当に、サイタマ先生と、サイタマ先生に弟子入りしているジェノスさんと、それからサイタマ先生に起こされた私しか住んでいない。静かといえば聞こえはいいけど、ひと気がなさすぎて不気味なのも事実。……だれか引き上げて付いてきてもらえばよかった。

『おい小娘』

家を出て数十メートル。少し肌寒いなと考えたり、誰か引き上げて夜の散歩の護衛をして貰おうかなと考えていた時、背後から声を掛けられカーディガンを頭に被せられた。

「ゲリュさん」

カーディガンを被ったまま振り返って見上げれば、頭に死者の証である三角巾をつけた半透明の宇宙人……ゲリュガンシュプさんがいた。
そういえば、今日は彼を引き上げたままにしていたんだった。

『どこへ行く。遠くへ行きすぎるとボロス様が心配する』

「……気分転換の散歩です。あの、ひとりじゃ不安なので付いてきてもらってもいいですか?」

『はぁ?……まあ、仕方ない。オマエに怪我をされるとボロス様がなにを仰るかわからないからな。付いて行ってやろう』

ふん、と彼は仕方ないなとでも言いたげに吐息をひとつ大げさに漏らした。私は髪の毛を数本抜き、彼に差し出す。
ゲリュさんは首をかしげ、怪訝な表情を浮かべながら数ある触手の内の一本を動かし、髪の毛を受け取った。

「食べられますか」

『……これが、ボロス様が毎日食っている“贄”というやつか』

「はい。それで具現化できます。何か……例えば、恐ろしい怪人がでたら、あなたに助けて欲しいんです」

幽体ではこの世のものに干渉できない。念力も通用しない。でも私の一部を食らうことで幽体は質量を持ち、この世に一時的にではあるが“生者”として存在できる。

「私、ゲリュさんを信頼しています。悪いことをしないって信じています。私を守ってくれると、信じてます」

私の髪を握る触手を両手で包む。まだ贄を取り入れていないから彼は幽体のままだから触れられないけど、まるで触っているかのように包むことはできる。
理性があり頭のいいゲリュガンシュプならばと、私はボロスさんの言葉を信じて彼を引き上げた。上司の期待を裏切らないように彼は生きなければならない。

『……仕方なくだ。本当に仕方なく、だからな』

私の手をすり抜け、手にしていた髪の毛を取り込んだ。
透けていた体には質量が与えられ、ゲリュさん越しに見えていた街も見えなくなる。頭についていた三角巾も消えてなくなった。

「……下がっていろ。早くも仕事らしい」

触手が私を庇うように前に出され、背中に隠すように少しずつ誘導される。
彼の後ろから覗いた先には、へんなかたちの怪人が数人。

「今後は夜中に出歩くのは禁止だ。ボロス様がいたとしてもな」

「はーい」

夜のZ市は恐ろしい。ので、今後は夜中に出歩くのはやめ……ません。やっぱり私にはこうした気分転換が必要だと思うので。