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累(鬼滅の刃)
※「これ」と同じ

▼傘と日和

手を引いてみた。山の木々の陰に身を置く彼の手を引いて、地面に落ちる影の淵まで連れ出した。累くんは案外簡単に連れ出されてくれた。私が彼を太陽の下に出す気がないことはしっかり分かっているらしい。

「真上にあるうちに」

太陽は昇り、やがて沈む。太陽が傾けば、そこから放たれる光も傾き、この山に射し込むだろう。
夕方という昼と夜の境界の刻は短く、すぐにそれは鬼の土壇場である夜に変化する。
夜にこの山の中や、山の近くを一緒に歩くことはあったけれど、昼間にそれはできなかった。だから一緒に歩きたい。それだけのこと。
差してある傘を傾けて山の影にくっつける。遮光が完璧なこの傘は、この瞬間だけ私と累くんの境界線を繋ぐものとなる。累くんが躊躇いがちに一歩踏み出し、傘の下へ入った。

「少しだけだよ」

短く息を吐いて私を引き寄せる細い腕。切れ味を抑えられた糸が私の腕に絡みつき、累くんから離れられないように拘束される。
太陽がその日一番高い場所へ昇る時間帯。傘の下で私は累くんに寄り添い、歩幅を合わせてゆっくり歩みを進めた。