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【 ドルドキンスは誰か 】
「今回のミッション成功で、ハーネスの勢力圏が予定のポイントまで到達しました」

「機は熟した、という事ね。ここまでは我々の計画通り……」

ハーネスの司令室にて。
生徒が一人残らず帰宅した頃、再びジンと玲奈は話し合っていた。
モニターに映るのは今日のハーネスの結果……グリーンバース湖制圧の様子だ。

「次の段階に入るにあたり、私にひとつ考えがあるの」

「興味深いですね。聞かせてください」

「あなたの紹介も兼ねて、うちの生徒をテストしてみたいのよ」



「くあ……ねむ……」

珍しくスズネが時間になっても部屋に来なかった為、一足先に玄関に向かう。
玄関にはタケルがすでに来ていて、私を見ると「おはよう、眠そうだね」と笑いかけてきた。挨拶を返し、欠伸を噛み殺す。

「待たせた、二人とも」

「全然待ってないですよ!おはようございます、カゲトラさん!」

「ああ、おはよう」

男子寮の扉から出て来たカゲトラさんと挨拶を交わすと、彼は私のリボンに手をかけて直した。

「曲がっていた」

「すみません……ちゃんと鏡見てなくて……」

「身だしなみはきちんとな」

「はーい」

ぴっと綺麗にリボンを結んでくれたカゲトラさんはやっぱり第一小隊のお母さんだと思う。私がだらしないのもあるけど。
スズネが女子寮の扉から飛び出て来て、寝坊したのか聞くと、苦笑いでスズネは肯定した。

「前は寝坊ばかりだったぞ」

「アユリちゃんに良いとこ見せたくて、最近は寝坊しなかったよね」

「い、言わんといてや!恥ずかしいやろ!」

へえ……スズネ、私が来る前は寝坊ばっかりだったんだ。
タケルの言葉に顔をほんのり赤く染めているスズネを見るに、良いとこ見せたくて頑張っていたというのは本当のことらしいね。

「もうええやろ!はよ行こうや!」

「スズネ可愛い〜」

「からかうなっ」

ぷいっとそっぽを向いたスズネをからかうと、ムッとした表情で抱きついてくる。
今日もいつも通り、登校時間から楽しい。
一日で最初に神威大門に来て良かったと思える時間だ。

わちゃわちゃしてはカゲトラさんに注意され、タケルを巻き込んでカゲトラさんも巻き込む。
そうやって遊びながら門まで来た時、目立つオレンジが見えた。
アラタおはよー、と声をかけようとしたが、それはアラタの声に阻まれてしまう。挨拶阻止するなよ……。

「頼む!ドルドキンスに会わせてくれ!」

ドルドキンス……え、ジンさん?
なんでアラタ達ジェノックがハーネスの司令官に会いたがるんだ。
そんな私の疑問はスズネやカゲトラさん、タケルも思ったようで、訝しげな視線を送っていた。

「なんやの、藪から棒に」

「俺達、ハーネスの司令官ドルドキンスに会わなくちゃならないんだ。それが無理だってんなら、せめてドルドキンスが誰かだけでも教えてくれ!」

「はあ?なんやそれ」

どうやら“ドルドキンス”がコードネームだという事は分かっているらしい。
なんの事情があるかはわからないけど、なんだか必死だ。
そんな姿を見てもカゲトラさんの表情は変わらず、「司令に会わせるわけにはいかない」と首を横に振った。

「何故、ハーネスは司令官を秘密にしているんだ?」

そんな答えに早々納得してくれる筈もなく。
星原くんと並んでアラタを見ていた濃い茶色の髪の男の子がそう問う。
彼と、その隣の緑色の背の小さな男の子は初めて見るな。

「うちは小さい国や。大国になにされるか分からんやん。隠せるもんは隠して当然やろ?」

スズネが私の肩に肘を乗せて余裕そうに笑う。
交渉を受ける側って、なんかそんな態度になっちゃうよね。

「どうしても話せ言うなら、それなりの見返り貰わんとなあ。タダでエエ情報貰おうなんて、甘い甘い」

ニヤニヤと見つめるスズネの目は悪戯に成功した子供みたいに楽しそうだ。
そんな彼女の様子に、濃い茶色の髪の男の子は頷き、なにか考えるように一度瞳を閉じた。

「わかった。アラタ、出直そう」

「……おう」

渋々といったように離れていくアラタと星原くん達。
スズネは私の肩から腕を下ろすと、眉を寄せて首を傾げた。

「ドルドキンスに会わせろなんて……ジェノックの連中、何を考えとるんや」

「気になるな。少し探ってみるか」

カゲトラさんに背中を押され、一人離れて歩く濃い茶色の髪の男の子に声をかけた。
彼は振り向き、私達の方に近づく。

「さっきは突然済まなかったな、挨拶も無しに。俺はジェノック第一小隊隊長の出雲ハルキだ。よろしく」

「ハーネス第一小隊所属、槙那アユリです」

「俺は乾カゲトラだ。まあさっきの事なら、気にしてはいない。それに俺もよく部下に振り回されているからな」

キッとカゲトラさんから視線が向き、苦笑い。
振り回しているのはお前らか……そんな視線が出雲くんから向けられる。はい、すみません。
出雲くんは少し口角を上げ、力が抜けたように笑う。
軽く頭を下げ、「では、失礼する」と言ってアラタ達を追うように歩いていった。

「よく部下に振り回さるって、ウチの事言っとるんか?」

「私も……すみません」

「意外だなあ。二人とも自覚あったんだ?」

「んなっ!タケル〜!」

「はあ……やれやれ……」

私の周りを走るタケルを追いかけるスズネ。それを見て頭を抱えるカゲトラさん。動けずじまいの私。

アラタ、なんであんなに焦っていたのかな。
ハーネスの司令官のこと調べて、一体何になるって言うんだ。

「ジェノックの動きが気になるな」

「ですね……」

「もしかしたら他のジェノック生徒も、司令の事について探っているのかもしれない」

「正体が割れるのも時間の問題ですね」

「その心配、ウチはあらへんと思うけどな」

「ジェノックの小隊長に聞き回ってみようよ。ヒントかなにかは得られるかもよ」

「そうだね。じゃあ、朝からダルいけどやるか……」

2016.05.27
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