私は地上から、ミゼルが上空から攻めていくスタイルだ。
もちろん公式戦は私ひとりで戦っていた。テレビの向こうでバン兄さんが見てるんだもの。ずるなんて出来ない。
でもミゼルも戦いたがる為、こうした非公式戦はほとんどミゼルがやっている。彼は意外にも好戦的なのだ。
「トドメ!」
最後の一撃。インセクターの二本のソードがアキレス・ディードをブレイクオーバーした。
ふう、と息をつく。私は特に何もしていないが、やっぱりバトルは緊張する。
「やるじゃんアユリ!」
「そ、そうかなあ」
「やっぱLBXバトルって最高に面白いな!」
実質二対一だから、こういう純粋な相手には罪悪感を感じざるを得ない。
「俺、LBXのプロプレイヤーになるのが夢なんだ!アユリは?」
「私も同じ様なものかな。でも……」
「間もなく、本船は神威島へ到着します。お忘れ物の無いようにご注意下さい」
アナウンスが響き、会話が途切れる。
何かを言いかけた事に関してアラタは問うて来たが、私は曖昧に返しておいた。
「もうつくみたいだな。降りたら落ち合おうぜ!」
「うん!またあとで!」
船内の個室に置きっぱなしの荷物を取りに向かうアラタが、手を振りながら遠くなる。手を振り返し、私も個室に向かった。
CCMに映るミゼルが、辺りを見渡している。
そう言えば甲板に出るまではポケットに入れてたから、個室までの通路は見てないんだっけ。
興味津々と、キョロキョロ見渡すミゼルの可愛さは一級品。
前方から人が歩いて来た為、CCMを自然な動作でポケットにしまった。
すれ違う。金髪の美少女からは、とても良い匂いがした。
◇
下着や勉強道具その他もろもろが入ったボストンバッグを肩に掛けて、停泊した船を降りる。
既にアラタが神威島に上陸しており、私を見つけると「おーい!」と手を振りながらこちらに走ってきた。
「ついたな!神威島!」
「うん!見てアラタ!神威大門統合学園がよく見えるよ!」
「感動だあ……」
はあ、と感動からくるため息をもらすアラタを見ていると、自然と笑みが溢れてくる。
そうだよ。私が夢見た神威大門統合学園が今、目の前にあるんだ。感動するなあ。これも全部、私を強くしてくれたミゼルのおかげだ。
「お、アユリ。きっとあいつがもうひとりの転入生だ」
アラタが指差す先には、ラフな格好の美少女。
さっき私とすれ違った金髪の美少女だ。
「話しかけてみようぜ」
「後で学校で会えるのに……」
「良いから良いから!」
私の手を引くアラタに「も〜!」と不満げな声を漏らしてみせるも、楽しそうに笑うだけ。
ああまったく。流されやすいんだから。ミゼルのそんな声が聞こえた。
2015.08.10