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【 説明放棄だなんて……。 】
校庭につくと、すぐに日暮先生に駆け寄った。
彼女は私を見ると、ベンチから腰を上げて「来たな」と呟く。

「少々長くなるが、ちゃんと聞くように」

「はい!」

「じゃあまずは……おや、」

日暮先生が歩き始めた直後、何かを見つけたのか立ち止まる。
いくつかの足音が聞こえ、日暮先生の振り向く方向に視線を向けた。そこには、アラタ、星原くん、更に担任の先生であろう大人の女性が居た。
私の名前を呼びながら手を振るアラタを、星原くんが咎める。

「日暮先生、これから転入生への説明ですか?」

「えぇ。見ての通り」

「さっきぶりだな、アユリ!お前も来てるなんて思わなかったぜ」

「私も」

アラタが私とフレンドリーに話すのを見て、女性は「顔見知りなの?」と問いかけてくる。
アラタがフェリーで会った事、更に星原くんとも会った事も簡潔に説明すれば、女性と日暮先生は納得していた。

「……そうだ、美都先生。良い提案があるのだが……」

日暮先生が女性を見て“美都先生”と呼ぶと、女性は表情を変えずに「なんでしょう?」と聞く。
だが日暮先生は何も言わない。美都先生をまっすぐ見ていた視線が、すーっと私に向いたのを見て、何か察したらしい。
鉄仮面のように変わらなかったキツい印象を受ける無表情が崩れ、眉が寄せられる。

「まさか……私に彼女への説明をして欲しいという提案ですか?」

「さすが、ジェノックの司令官。察しが良いですね。」

日暮先生は少しだけ口角をあげて頷く。
美都先生が重い溜め息を吐いていた。

「あれ?アユリまだ聞いてなかったのか?」

「全く聞いてないよ。文字通り、全くね」

「……その様子だとハーネスの説明もしていないんですね」

「まぁ、な」

私とアラタの会話を聞いてか、美都先生の眉は力無く下がっていく。
頭を抱え、はあ、と再び重い溜め息が吐かれた。
数秒の沈黙の後、美都先生は「わかりました、」と溜め息混じりに言う。日暮先生はまた少しだけ口角をあげた。

「では、初めまして。私は美都玲奈。ジェノックの司令官よ。日暮先生はあなたの所属するハーネスの司令官になります」

「槙那アユリです。よろしくお願いします!」

「もうあまり時間がありませんし、移動しながら説明します」

「敵国の司令官に挨拶だなんて……」

「いいじゃんヒカル!」

丁寧な自己紹介をしてくれた美都先生に返すように、私も綺麗なお辞儀をして見せた。
星原くんが何か言っていたが、アラタに肩を組まれて黙る。嫌そうに眉を寄せてアラタから離れても、やっぱり美少年だ。

「来なさい」

美都先生が校庭の端にある時計台に近づく。
私はアラタと星原くんと共に美都先生を慌てて追った。
美都先生は時計台の壁にその細い指を這わせ、一定の場所で止まる。
カチリとそこを押せば、時計台の台座の部分が開き、その先に地下へ続く階段が現れた。
カチリと押したのはスイッチか。

「開いた!すげー!」

「暗いから、足元に気をつけて」

美都先生に続いて階段を下りていく。
薄暗い中に響く複数の足音。こだまして、反響する。
降りた先には扉があり、美都先生は躊躇なくそこを開けて、私達三人を通した。扉をくぐったその先には、左右に大きな窓のついた長い通路が広がっていた。

2015.09.08
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