『さて…』
天火と別れ鎮守の森を駆けて早数分…
さっそく、前方に連れ立って走る男二人を発見した。逃げた罪人は確か六人…となると、残りは天火のところか。
『…無事だと良いけど。』
「ぎゃあっ!?」
「ぐっ!!」
ぼんやりと呟きつつ投げた小刀は、罪人二人の肩に命中した。痛みにスピードを落とした彼らは、しばらくしてよろよろと立ち止まる。
『ふう…やっと止まった。』
「てめっ…何してくれとんねんコラァッ!!」
『何するもなにも、あなた達罪人でしょう?追われてると分かって止まらないようだったので、強行手段に出たまでです。』
罪人に手加減するほど、こちらだって甘くない。それでも致命傷与えなかったのだから感謝して欲しいくらいだ。
「てめえ…曇か。」
『そうですよ。』
「はっ…たかが女の分際で、でけぇ口叩きよる。」
『…たかが?』
「そうや!曇の娘やろうが何やろうが、所詮はただの女やろうが!!」
そう叫ぶと、罪人の一人が自分の肩から小刀を抜き取る。それを見たもう一人も、続いて勢いよく小刀を抜き取った。傷口からは真っ赤な血液が滲み出ている。
『ああ…抜くと出血が酷くなるのに。』
「っ…お前、そんな余裕こいててええんか。」
『え?』
「俺等腐っても侍やで。」
「刀持たせたらどないなるか分からんのか?」
『…はあ。』
「非力な女じゃ勝てへんで!!」
下卑た笑みを浮かべる二人は、小刀を構え一斉にこちらへ向かってくる。どうやら、完全に勝負は貰ったと思っているらしい。
まったく、困った罪人だ。
「なっ!?」
「見え、な…」
『私の姿も目で追えないくせに、大口を叩くのはどうかと思いますが。』
私が刀を仕舞うより先に、地面に倒れ込む罪人達。信じられないという顔をしている彼らは、その後一切抵抗することは無かった。
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「おう凜香、終わったかー?」
天火の呑気な声と共に、吹っ飛ばされた男がどさりと地面に伸びる。他にも捕縛された罪人がそこらにゴロゴロと転がっているが、僅かに動いているあたり意識はまだあるようだ。
『なんとかね。』
「なんとかって…お前相変わらず容赦ねえのな。」
『少し筋切って動けなくしただけだよ。止血はしたんだから、むしろ優しいでしょ?』
「ええー…そういうもんなの?」
『そういうもんです。』
「本当にありがとうございます!!」
「これでクビにならずにすむーっ!!」
最後の罪人を縛り上げる私たちに向かって、半泣きで頭を下げる警官さん。けれど、まだこれで終わりではない。
「あと一人だっけ?任せとけっ」
そう、捕らえた罪人は五人。あともう一人、残っている。