君の音色を | ナノ

『着いたー!日本!』

久々に感じる故郷の空気に、思わずそう叫んでしまった。マネージャーもスタッフも付けずに、一人で日本に帰るなんていったい何年振りだろう。
ううん、そもそも今までは帰って来ることさえあまり出来なかった。

でも、今日からは違うの。

『もしもーし。あ、絵麻?私。…うん、今空港着いたから。これからそっち行くね。』

携帯片手に大きなスーツケースを引きながら、空港を出てタクシー乗り場へ向かう。

『ん?あぁ、大丈夫だって。駅からの地図ならもらってあるし。…分かった。着いたらまた連絡する。…はーい。じゃ、またあとで。』

通話を切ったと同時にタイミング良く入って来たタクシーのトランクを開けて、荷物を押し込む。そして後部座席に勢いよく乗り込んだ。

『運転手さん、吉祥寺駅までお願い。』

私たちに新しくできた、キョーダイ達に会うために。


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