目覚ましが鳴らない日は珍しい。お腹にまわっている腕に手を添えて顔だけ振り向くと、ちょうど起きたらしいまだ眠たそうな目をした翔が映った。珍しく休暇が重なって、明日は寝坊できるね、なんて言って。そんな絶好の機会を翔が逃すわけもなく今日は腰が重たいんだけど。それでも、ゆっくりとした時間が流れるこんな日が心地いい。
起きるか
眠そうな声はまだはっきりしていなくて。もう少し寝よっか。そう返すと翔はそうだな、とふれるだけのキスをした。幸せってこういうことなんだなぁ。なんて思った。
なまえ、こっち
まだ掠れた声で翔は自分の方へ向けと言った。向かい合うとぴったりとくっついて翔はくすくす笑う。おでこにかかる息がくすぐったい。胸板におでこをぐりぐりとさすりつけた。
なんで笑ってるの
ぎゅう、と背中に手をまわすと翔の心臓の音が聞こえた。いつもより優しく聞こえるのは、この穏やかな時間のせいか。それとも甘く優しい空間のせいか。どっちも、なんだろうな。翔も返すようにぎゅうっと優しく力を込めて、また笑った。
なんか、幸せだな、と思って
最近はST☆RISHとしてでなく個人個人としてもいろんなところで活躍するメンバー全員と会ったのはもうどのくらい前だろう。翔とのんびりするのだって本当に久しぶりだ。今日はなにしようかなぁ。先ずご飯作らなきゃ。なんてのんびり考えられるのが、幸せで。翔も多分そう思ってる。
寂しくないわけじゃないしファンに笑顔で応えるのに不安にならないわけじゃない。でも一緒にいれるだけでこんなにも安心する。翔がアイドルじゃなかったらって考えなかったわけじゃない。でも翔がアイドルを目指してたから同じ学校で、翔と出会えたわけだし。それに、私は自分の夢を追ってきらきらしてる翔に魅かれた。アイドルになって更に輝いてる翔をテレビ越しに見ると、やっぱり顔がゆるむ。みんなの翔であるのは、やっぱりちょっと嫉妬してしまうけど。それでも最高に輝いてる翔の応援をしたいから。
幸せだね
そう言って私も笑った。そろそろお昼かな。時計を見ようと顔を上げると視界は翔で埋め尽くされて。すぐ近くで合う目にくらくらしたけど距離を詰めてくるから静かに目を閉じた。触れる手前、翔が少し笑った。
「おはよ、なまえ」
目が覚めて、翔が隣にいる。学園時代に願ったのは、そんな幸せな今日みたいな日。