あの一件から俺は、よくアイツと関わるようになった。
みょうじなまえ。まず副委員長というところに驚いた。こんな抜けてる女が……?と思ったが、抜けているからこそだ。他の代議委員にでも押しつけられたのだろう。実に悲劇のヒロインだ。
だからと言って、優しくしてやるつもりもなかったのだが……


「おいみょうじ!モタモタしてんじゃねぇ、早く昨年度の部活別予算案持ってこい」

『は、はい!ただいま!』


何故か素の自分で、彼女の面倒を見てやっている。
いや、面倒を見てやっているという表現は些か語弊があるかもしれない。委員長と副委員長として、共に仕事をこなしているだけ。そう、そうだ。ただそれだけなのだ。
コイツのことを気にかける必要など、どこにもな――


「さっきからそこじゃねぇっつってんだろ!お前の耳は飾りかバァカ!」

『ひゃあっ!ご、ごめんなさい!』


くない。やっぱコイツ駄目だわ。
抜けてるっつーか鈍臭いっつーか、とにかく放っておけない。今も少しでも目を離せば、脚立から転げ落ちそうだ。
はぁ、と小さく溜息をついてパイプ椅子から立ち上がる。そうして脚立に乗っておろおろしながら目当ての資料を探すみょうじの方へ歩いていった。


「ったく……こっちだよ、」


見てる本棚から違うっつーの。キャスターつきの脚立を、彼女が乗った状態のままゆっくりと移動させる。と、小さく笑い声が聞こえた。くすくす、まるで小鳥のさえずりのよう。


「……何笑ってんだよ」

『ふふ、脚立すいーって、楽しいです』

「……あーあ、誰かさんのせいで今日提出の予算案その他諸々の書類、遅れちまうなァ」

『やっ、すみません、今すぐ見つけます!』


途端に涙目になり、書類捜索のため背中を向ける彼女。笑ったり慌てたりと忙しない。もしかしたらコイツは、目立たないだけで案外表情豊かな奴なのかもしれない。
それに、さっきの笑った顔。
ちょっと可愛いと思ったなんて、死んでも言ってやんねぇ。
俺の口元は自然と笑みをたたえていた。


「あと10分で下校時間かァ」

『ひいいっ!まま待ってください…!』





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理良様リク「黒籠短編『君のことでいっぱい』アフターストーリー 甘かほのぼの」
エンド的には花宮片想いエンドになりますかね。大好きな花宮さん、楽しく書かせていただきました。
この主人公ちゃんはいつまでたっても敬語と「花宮君」が抜けなさそう(笑)
理良様、この度はリクエストありがとうございました!これからもご贔屓の程よろしくお願い申し上げます。


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二つ目のリクエスト作品をありがとうございます!!
このお話の花宮と主人公ちゃんのやり取りが可愛らしくて大好きです
あとがきにあったエンド候補がどれも素敵で、その中からA花宮片想いエンド。だったのですが、もうツンデレは花宮が可愛かったです
素敵なお話ありがとうございました!!












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