『来栖くん来栖くん』

「どうした?」

『うーん…』

「呼んどいてソレかよ」

『いや“くるすくん”って舌噛みそうだなって』

「……しょ、翔って呼んでくれてもいいんだぜ?」

『あ、トキヤだ!トキヤトキヤー!』

「何です、朝から騒々しい」

「………」



早乙女学園は芸能専門学校のため言わずもがな恋愛禁止だ。しかしその特異点を除けばただの男子高校生と女子高生、気になる相手だってできてくるわけで。
現にクラスの半数以上が誰かを熱っぽい視線で見つめている。自分の片思いならセーフらしく先生も見逃しているが、果たして大丈夫なのかこのクラス。
仮にも優秀な人材が揃ったクラスなのだが、と悪態を吐く俺だって、例外じゃない。ただ、片思いさえも許されないようなこの状況が、酷くもどかしいのだ。


「なまえ、次は私と一緒の授業でしょう?早く準備なさい」

『待ってよトキヤ〜!あ、神宮寺さん、チョコありがとうございます!』

「気にしないでいいよ。そのチョコも喜んでいるだろう、素敵なレディに食べてもらえるって。」

『チョコにも感情ってあるんですね〜!じゃあ、行ってきます!』


パートナーから溺愛され、大財閥の御曹司からも手厚い寵愛を受けている、まさにお姫様。そんな彼女・みょうじなまえが、俺の気になる相手。
彼女の周りにはまだまだたくさんの側近が仕えており、隣のクラスのふわふわ天然優男やら、あざと小悪魔わんこやら、ド真面目ドポエマー御曹司やら、ガードがとにかく堅い。
王子として近付くのも簡単にはいかない。毎日毎日、悶々とした重い気持ちを抱えながら彼女を見つめる日々。
早くしないと、誰かにさらわれてしまうかも。有力候補はパートナーのトキヤ。彼女も随分懐いているようだし、両思いになってしまうのも時間の問題だ。
せめて何か、きっかけが掴めれば――


『来栖くん!行ってきます!』

「い、ってらっしゃい」


トキヤと並んで教室を出ようとしていた彼女がわざわざ戻ってきて、俺に挨拶をした。そう理解するのに長い時間を要した。大袈裟に肩を揺らして我に返る。
ちゃんと、返せていただろうか。変なことを口走ったり、しなかっただろうか。疑問を反芻し続ける。まったく彼女のことになると、心臓が言うことを聞かなくて困る。
しかしそれ以上に、じんわりとしたあたたかさに上乗せされた「幸せ」が、甘くこころを満たしてゆくのだった。






ゲンキンな男は嫌いですか?



-------------------
理良様リクエスト「翔ちゃんでギャグ甘かほのぼの」
翔ちゃんがヤキモチ焼き(不憫)だったらかわいいとこんなお話に。彼は小さな幸せを存分に噛み締めそうですね。でぶっとやってから余計そう思います。
理良様、この度はリクエストありがとうございました!これからもご贔屓の程よろしくお願い申し上げます。


-------------------
星羅様のサイト「天の川と私」の七万打のフリリク企画のをいただきました!!
星羅さんの翔ちゃん可愛いです。きゅんきゅんしました
翔ちゃんの心臓とか、でぶっとのからいくと毎日をすごく大切に生きていそうですよね…
この度は七万打おめでとうございます!!
そして、素晴らしい小説ありがとうございました!!












人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -