目の前に広がる青い空、空より濃い青の海。
そして隣には水着姿の彼氏。
いかにも夏!!というシチュエーションだが忘れてはいけないのは、テニス部の合宿中であるということだ。
「大丈夫なの?こんなにはしゃいじゃって?」
「最終日くらい大丈夫だよ。もしかして海、苦手だった?」
「ううん、むしろ大好き!!」
「そっか。なら連れてきて良かった」
「そうだよ。ありがとう、周助!!」
「あ、いたいた!!ふったりともー!!」
「あ、英二!どうしたの?」
すごく楽しそうな笑顔でこちらに来た英二。
「海の家の近くでスイカ割りするから、二人とも来ない?」
「おー、夏らしくていいね!!行こう、周助!!」
「そうだね、行こうか」
海の前に移動するとペアが決まっているらしく二人一組で固まっていた。
「もちろん僕とでいいよね?」
「うんっ!当ったり前でしょ!」
するとスイカ割りが始まった。
あたし達は一番最後ということで他の人のを見ておく。
「あ、そうだ。手叩くのと、スイカ割るのどっちがいい?」
「んー、手叩くやってみたい。
それに周助のほうが力あるからスイカ割れるかもしれないし」
「了解。
そういうことなら頑張らなきゃね」
「次はお前達の番だ」
「やぁ、手塚。お疲れ様。
スイカは割れたかい?」
「いや、結構ヒビは入ってるが割れてはいない。
あぁ、これを使ってくれ」
周助は手塚君に差し出された白いハチマキと棒を受け取り、笑顔でこちらを向く。
「ハチマキ、付けてもらっていいかな?」
「あ、うん…。
じゃあちょっと座ってもらっていい?」
そうすると周助はあたしに背中を向け砂浜に座る。
髪の毛に指を絡めるとさらさらと指の間をこぼれ落ちた。
うわぁ、さらさらだ…。
「おーい、準備出来たー?」
「あ、うん!!ちょっと待って!!」
後ろから突然、英二に声をかけられびくりと肩が跳ねる。
あたしは急ぎつつも慎重にハチマキを付けた。
「準備が出来たみたいし行こっか!!」
ハチマキを付け終わった周助は英二に手を引かれスタートラインへと移動していった。
あたしも行かなきゃ!!
それからスイカから少し離れた所に立ったあたしは手を叩きながら周助の名前を呼んだ。
何回か回ってせいで足下が覚束ない周助にハラハラしてしまう。
「あっ…」
その時、目の前でバランスを崩し倒れそうになる周助を庇うように無意識に一歩踏み出した。
夏色恋模様
周助を支えきれず、あたし達はそのままもつれこむようにそのまま倒れてしまったらしい。
気付くと、胸には周助の手が。
そして目の前に目隠しをした周助が映っていて、唇には暖かくて柔らかい感触が伝わる。
周りからは、はやし立てるような声と好奇に満ちた視線が容赦なくあたし達に突き刺さる。
クラクラと眩暈に似たような感覚がし、ぷつりと意識が途切れた。