「…鉄平先輩の手、好きです」


自分より二回り以上も小さい後輩であり恋人でもあるなまえがぽつりと呟いた。
もうほとんど地面に雪はなく、日に日に春に近づいているが強く吹き抜ける風は冬のように冷たくて、俺から手を繋いで今に至る。


「ん、いきなりどうしたんだ?」

「私、かなり前から先輩の手がすごく好きなんです。大きくて、あったかくて。
…この手は、たくさん何かを守って助けているんだなって」


なまえは俺を見上げながら、ふわりと笑顔を浮かべた。
寒いが、心の奥底からじんわりと熱を持ち始めた。


「俺、小さい頃、よく見ていた戦隊ヒーローみたいって思ってたんだ。
強くて、優しくて、皆に頼られているのが、すごく憧れだったんだ」


ちらりと横にいるなまえを見ると、小さく頷きながら相槌を打っているようでその姿に自然と頬が緩むのを感じながら、いつもよりずっと小さな歩幅で歩く。


「けどな、今は違うんだ。…俺は、俺を育ててくれたじいちゃんみたいになりたいなって思うんだ。じいちゃんな、すごい厳しくて同じくらい優しんだ。
それに、昔ばあちゃんがな、じいちゃんは世界一素敵な男の人なのよ、って言っててな。幼いながらじいちゃんみたいになりたいって思ったんだ。」

「鉄平先輩のおじいちゃんとおばあちゃん、本当に優しくて素敵な人ですよね。前に遊びに行ったときいろいろお世話になっちゃいました」

そんな恋人の言葉に、さほど考えずとも言葉が溢れた。




終わらないを見よう



「将来一緒に暮らすことになるかも知れんからな、仲が良好で俺は嬉しい限りだ」


そう言いニヤリと広角を吊り上げるのとほぼ同じタイミングで、なまえは顔と耳を更に赤く染め上げ、しばらく俯いていたがゆっくりと顔を上げた。


「鉄平先輩のおじちゃんとおばあちゃんみたいな、相思相愛で仲のいい夫婦に二人でなりたいですね」


目を反らしもごもごと可愛らしいことを言う愛しの恋人の唇に、俺は優しくひとつキスを落とした。








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