青く晴れ渡る空。町の外れにある洞窟には、いつものメンバーが集まっていた。
そんな時ガロンは視線が気になり、ついに口を開いた。


「なぁ、リリー。さっきからどうした」

「貴方の前髪ってうっとおしいわよね」


予想もしなかった言葉にはぁ…、と言葉を発するガロン。
そんな会話に茶々を入れるように、他の3人も混ざる。


「けど、そしたらリリーの髪もそうとう長いよね。たまに踏んづけちゃってるし」

「昔から無駄に長かったよな」

「けど、リリーの髪の毛ふわふわで綺麗だよね」

「そんなことないわ、アイリスのほうが十分綺麗よ!!」


アイリスの言葉に飛びつくように抱きつくリリー。アイリスは転びそうになりながらも、近くにいたガロンに支えられ転ばずに済んだ。


「リリー、危ねえから気をつけろよな」

「分かってるわよ。というか、男共はそんなに長くて暑くないわけ?」

「僕はそんなに長くはないんじゃないかな?まぁ、動いたら暑いけどね」

「オレは切るのが面倒なんだよ」

「いや、俺は死んでるし関係ないだろ」

「ふーん」

「けど、ガロンの前髪って長いよね」

「そうそう、なんか封印してあるの?」

「止めなさい、ノワ。ガロンは厨二野郎と違って常識人よ」

「うっせえよ、ロリバ…、っあだだだだだ」


グリスの言葉を遮るようにアームロックをかける、優しげな笑顔を浮かべるリリー。
そんな2人を視界の端に捉えながら話は続く。


「…もしかして、怪我とかしちゃったの?」

「別に何ともねぇよ。赤眼は不吉だのなんだの周りがうるさかっただけで…。
まぁ、今は死んだわけだし隠す必要はないがな」


不安げに見つめながら尋ねるアイリスに、優しく頭を撫でながら生きていた頃の僅かな記憶を手繰り寄せながらガロンは答えた。


「へぇー」


しゃきん
薄ら笑いを浮かべるノワの右手には、何処からともなく取り出されたハサミがあった。


「おい待てやめろ」

「やだなー、冗談だよ。それに、ガロンに触れないしね。
けどさ、切ろうとは思わなかったの?」

「まぁな。面倒事は嫌いだしな」

「…ガロンの目、見てみたい。無理にとは言わないから、だめ?」


今までいつもより静かだったアイリスが、ガロンの服の裾を引っ張りながら恐る恐る尋ねた。


「それくらい大丈夫だぜ」


ほら、そう言いながらガロンは片手で自分の長い前髪をかき上げた。


「へぇー、真っ赤ってわけではないんだね。
…って、アイリス?」


じーっとガロンを見つめ続けるアイリスにノワが声をかける。
反応の薄すぎるアイリスに、ガロンも声をかけようと口を開きかけた時だった。


「…綺麗。地平線へ沈む太陽みたい。赤くて、優しい色だね。
わたし、大好きだよ」


ガロンは、我を忘れてアイリスに釘付けになっていた。
ふわりと優しく笑う顔に、もう1つの顔が朧げに重なる。
どこかで、言われた言葉だった。こんな風に優しく笑いながら、言われたはずだ。
ただ思い出せないだけで、心の奥底ではしっかり覚えている。彼女の優しさを。


「ガロン…?」

「…あ、あぁ、悪い。ありがとな」


ガロンはアイリスの呼び掛けに答えると、前髪を下ろしぐしゃりとかき混ぜた。


「さて、そろそろグリスを助けてあげよっか。
さすがに、ね…」


ノワの言葉に合わせて後ろを振り向くと、顔を青くするグリスと、清々しすぎる笑顔を浮かべるリリーを見て、ガロンとアイリスをガロン救助へと一目散に向かった。





→あとがき












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