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「思うんだけど」
「うん?」

シリウスの問いに、リーマスは読んでいた本から彼に視線を移した。
「砂糖いくつ入ってんだよ、それ」
それ、と呼ばれたもの――つまりは紅茶だが、溶け残った角砂糖が顔を覗かせている。
「わざわざ数えてなんてないよ」
そんなことか、とでも言うように、リーマスの視線は再び本に向けられた。
「…ていうか、それと一緒にその最高に甘いチョコレートを食おうっていうお前の精神が理解できない」
「君に理解されようなんて思っちゃいない」

(あ、なんだろう。俺、今なんか泣きたい)

「まあ、僕だったら、可愛い彼女が丹精込めて作ってくれたビターチョコレートを一目見るなり『いらねぇ』なんて言って泣かせるような真似はしないけどね」
「えっ、あいつ泣いて…」
「それに、スネイプに慰めさせたりなんてしないし」
「はぁ!?お前なんでそれを俺に…」
「こんなところで油を売るなんてバカなことは言語道断だよ」
ぽす、とシリウスの右肩に、リーマスの左手が乗った。
「ね?シリウス」

(ああ、リーマスの満面の笑みだ。ていうか、肩痛い。爪がめっちゃ食い込んでるんですけど)




「あれ、リーマス。シリウスは?」
ひょっこり現れたジェームズは、新しい悪戯でも思いついたのだろうか、黒髪の友人を視界に収めようときょろきょろした。
「…ああ、僕の恋愛講座を聞くなりどこかに吹っ飛んでいったよ、泣きながら」
「(泣いたのか…)じゃあ、僕らは気長に待つとしようか」
「あ、ジェームズ、君も…」
「いらない。その紅茶はいらない」


End.



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