<マスター シーンT>







駆け抜けるような突風は広大な砂漠を巻き上げ、空気の流れに砂を乗せる。

乾ききった神聖なる丘も、砂漠の中にある以上平等に砂嵐に飲まれていた。

砂嵐の中、目を閉じた少年が一人。

所々ほつれ薄汚れた麻布が褐色の肌を覆い、太陽光と砂埃から彼を守る。
麻布と自身の茶髪を自由に風に遊ばせる反面、その顔には僅かな表情も見られなかった。

やがて風は止み、少しずつ空気は澄み始める。砂の向こうの地平線から沈み始めた太陽特有の橙色が、未だに閉じられたままの瞼を染めていく。

「―― 」

彼が小さく口を開き動かすと、神聖な丘の暗い影の中から、声に応えた何かが蠢く。

ゆっくりと左腕があがり、麻布が滑り落ちて褐色の肌に刻まれた黒い刺青が露わになる。微かに星が瞬き始めた空へ向けた左腕が振り下ろされるその瞬間。彼は閉じていた瞼を開き、自らの腕を向けた明かりの灯り始めた街を見た。

そして、金の眼は命じる。

「潰せ」

瞬き始めた星を塗りつぶすように、歪な翼をはためかせた悪魔が空を覆った。







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