<クライマックス フェイズW>
駆け寄ろうと遊星が踏み出だすと、倒れたまま十代が口を動かした。遊星は足を止め、振り返る。
「六芒星の呪縛を発動!」
追撃を防ぐために罠カードを発動させているアテムの背中が見えた。その背に守られて、バーストレディが残されている。
「後は俺に任せてください。……デブリドラゴンを召喚!」
十代に背を向けて、遊星は小さなドラゴンを召還する。攻撃力は到底覇王のモンスターに及ばないが、秘められているのは可能性だった。
「デブリドラゴンの効果、攻撃力500以下のモンスターを墓地から特殊召喚する。俺は生贄となって墓地に送られたクリボーを蘇生!」
唯一ゲームから取り除かれていなかったクリボーが、デブリドラゴンの横に再び召喚される。もう一方にはバーストレディが腕を組んで待っていた。
「レベル4・デブリドラゴンに、レベル1のクリボーとレベル3のバーストレディをチューニング!
――集いし願いが、新たに輝く星となる。光さす道となれ!シンクロ召喚!!
飛翔せよ、スターダストドラゴン!!」
三体のモンスターは一筋の光となり、光の中から星屑を纏った白銀の竜が舞い降りる。遊星の魂を削り無理やり召喚されていた今までと違い、本来の手順で召喚されたドラゴンは、力強く翼をはためかせた。
「シューティングソニック!!」
翼に溜められた光がブレスとなって、トラップで動きを封じられた悪魔を襲う。光に飲まれた覇王のモンスターが破壊され、爆風で視界を遮った。払うようにスターダストドラゴンが風を起こすと、一瞬で空気が晴れる。
覇王が砂の上で片膝をついていた。
無数の漆黒の羽根が宙を舞い、苦痛で表情をゆがめた覇王の上に落ちる。荒い呼吸で揺れるその肩から腕にかけて刻まれた刺青が、うっすらと血を滲ませていた。
「一体、君に何があったの!?」
十代を支えていた遊戯の声に覇王は答えず、むき出しの足で砂に落ちた羽根を踏みつけ、よろめきながら立ち上がる。
もう大丈夫だと遊戯の手を離れた十代が、苦しそうに呟いた。
「あれは、呪いか……」
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